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歯周病予防の基本:自宅で始める3つの簡単ステップ2025年10月25日

歯周病予防の基本:自宅で始める3つの簡単ステップ

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。

歯周病は、多くの成人にとって身近な口腔内のトラブルです。特に自覚症状がないまま進行し、気づいた時にはかなり悪化しているケースも少なくありません。しかし、正しい知識を持ち、日々のケアを実践することで、その進行を食い止め、健康な歯と歯ぐきを維持することは十分に可能です。

この記事では、まず歯周病がどのような病気なのかという基礎知識から、ご自宅で手軽に始められる予防の3つのステップ、そして専門家によるケアの重要性まで、包括的に解説します。今日から実践できる具体的な方法を知ることで、歯周病の不安を解消し、より健やかな毎日を送るための一歩を踏み出しましょう。

もしかして私も?歯周病は多くの成人が抱えるお口の悩み

歯周病は、日本において非常に多くの成人が抱えるお口の悩みです。厚生労働省の調査では、30代以上の約3人に2人が歯周病に罹患していることが分かっています。これは決して珍しい病気ではなく、むしろ誰もがなりうる身近な感染症と言えるでしょう。歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどなく、痛みや出血がないため、気づかないうちに進行しているケースが少なくありません。気がついた時には重症化していることもあり、歯を失う大きな原因となっています。

こうした実情から、歯周病は「サイレントディジーズ(静かなる病)」とも呼ばれています。自覚症状がないからといって放置してしまうと、歯周病は着実に進行し、やがては歯を支える骨を溶かしてしまいます。そのため、症状が出る前に予防策を講じること、そして定期的に歯科医院でチェックを受けることが何よりも重要です。

ご自身のお口の健康を守るためには、まず歯周病が「自分ごと」であると認識し、予防への意識を高めることが大切です。この記事では、歯周病の基礎知識から自宅でできる具体的な予防法、さらに専門的なケアの重要性までを詳しく解説していきます。

歯周病の正体とは?原因と放置するリスク

歯周病は、歯周病原菌と呼ばれる特定の細菌によって引き起こされる「感染症」です。この病気の直接的な原因となるのは、歯や歯ぐきの境目に付着する「プラーク(歯垢)」です。プラークは食べ物の残りカスと細菌の塊で、1グラムあたり1000億個もの細菌が含まれており、これが歯ぐきに炎症を引き起こすことで歯周病が始まります。

歯周病を放置すると、炎症は歯ぐきだけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)へと進行します。歯槽骨が破壊されると歯は徐々にグラつき始め、最終的には歯が抜け落ちてしまう可能性があります。一度破壊された歯槽骨や歯ぐきは、自然に元の健康な状態に戻ることはありません。これは、歯周病が不可逆的な性質を持つ病であることを意味します。

さらに、歯周病は口腔内だけの問題にとどまらず、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが分かっています。糖尿病や心臓病、脳卒中などの様々な全身疾患のリスクを高める可能性も指摘されており、口腔ケアは全身の健康維持においても非常に重要な役割を担っています。そのため、歯周病の早期発見と早期対策は、歯の健康だけでなく全身の健康を守る上でも不可欠なのです。

歯周病が進行するメカニズム

歯周病は、健康な歯ぐきの状態から徐々に進行し、最終的に歯を失う可能性があります。その始まりは、歯と歯ぐきの境目にプラーク(歯垢)が付着することで、歯ぐきに炎症が起きる「歯肉炎」です。この段階では、歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きの際に出血が見られたりすることがありますが、まだ歯を支える骨には影響がありません。

歯肉炎が進行し、プラークが歯ぐきのさらに奥深くへと侵入すると、「歯周ポケット」が形成されます。健康な歯ぐきでは歯と歯ぐきの間の溝は浅いのですが、炎症が進むとこの溝が深くなり、細菌が繁殖しやすい環境を作り出します。この深くなった歯周ポケット内で細菌がさらに増殖し、毒素を出すことで周囲の組織が破壊され始めると、「歯周炎」へと悪化します。

歯周炎がさらに進行すると、歯周ポケットの奥深くで増殖した細菌が、歯を支える歯槽骨を溶かし始めます。骨が溶けていくと、歯は次第に支えを失ってグラつきが強くなり、最終的には自然に抜け落ちてしまうか、抜歯が必要となります。このように、歯周病は段階的に進行し、一度失われた歯周組織は元に戻らないため、早期の予防と治療が極めて重要になります。

これって歯周病のサインかも?セルフチェックリスト

歯周病は自覚症状がないまま進行することが多いため、ご自身のお口の小さな変化に気づくことが早期発見の第一歩となります。以下の項目に当てはまるものがあれば、歯周病の初期サインかもしれません。ぜひ、セルフチェックをしてみてください。

歯ぐきが赤く腫れている、またはブヨブヨしている:健康な歯ぐきは薄いピンク色で引き締まっています。

歯磨きのときや、硬いものを食べたときに出血する:歯ぐきからの出血は炎症が起きているサインです。

口臭が気になる:歯周病菌が発するガスが口臭の原因となることがあります。

歯ぐきがむずがゆい、または違和感がある:歯ぐきの内部で炎症が起きている可能性があります。

歯が長くなったように見える、または歯の間に隙間ができてきた:歯ぐきが下がってきている兆候かもしれません。

冷たいものや熱いものが歯にしみる:歯ぐきが下がって歯の根が露出し、知覚過敏になっている可能性があります。

歯がグラつく、または噛むと痛みがある:歯周病がかなり進行しているサインです。

これらの項目の中で、一つでも当てはまるものがあれば、放置せずに一度歯科医院を受診することをおすすめします。自己判断で様子を見るのではなく、専門家による適切な診断とアドバイスを受けることで、歯周病の進行を防ぎ、ご自身の歯を守ることにつながります。

自宅で始める歯周病予防|基本の3ステップ

歯周病予防の第一歩は、毎日のご自宅でのセルフケアにあります。歯周病は日々の習慣によって進行を抑えることができる感染症だからです。このセクションでは、「質の高い歯磨き」「補助的清掃用具の活用」「生活習慣の見直し」という3つのステップに分けて、誰でも今日から実践できる歯周病予防の具体的な方法を詳しくご紹介します。

これらのステップを日々の生活に取り入れることで、歯周病のリスクを効果的に減らし、健康な口腔環境を維持することにつながります。

ステップ1:毎日の歯磨きを「質」で見直す

歯周病予防において、毎日の歯磨きは最も基本的かつ重要な習慣です。しかし、単に回数や時間をこなすだけでは十分ではありません。本当に大切なのは、歯周病の直接的な原因となる「プラーク(歯垢)」をどれだけ効果的に除去できているかという「質」です。このセクションでは、ご自身の歯磨きの質を高めるために、「歯ブラシの選び方と正しい当て方」そして「磨き残しの原因となる歯周ポケットを意識した磨き方」の2つのポイントに焦点を当てて解説していきます。

歯ブラシの選び方と正しい当て方

効果的にプラークを除去するためには、適切な歯ブラシを選び、正しい方法で磨くことが不可欠です。歯ブラシは、ヘッドが小さく、毛先が細い「超極細毛」のタイプがおすすめです。このタイプの歯ブラシは、歯周ポケットの奥深くや歯と歯の間といった、通常の歯ブラシでは届きにくい場所にも毛先が入り込みやすく、隠れたプラークをかき出すのに役立ちます。

次に、正しい磨き方です。歯と歯ぐきの境目に、歯ブラシの毛先を45度の角度で軽く当ててください。力を入れすぎず、小刻みにブラシを動かす「バス法」のような磨き方を意識しましょう。力を入れてゴシゴシと磨いてしまうと、歯ぐきを傷つけたり、歯の表面を削ってしまったりするリスクがあります。あくまで優しく、丁寧に、毛先が歯周ポケットに入り込む感覚で磨くことが重要です。鏡を見ながら、一本一本の歯を意識して磨く習慣をつけましょう。

磨き残しの原因「歯周ポケット」を意識する

歯周病は、歯と歯ぐきの間の溝である「歯周ポケット」に潜む歯周病原菌が原因で進行します。この歯周ポケットは、深くなると通常の歯磨きでは毛先が届きにくくなり、細菌が繁殖しやすい環境となります。そのため、歯周ポケットの奥に潜むプラークを意識して除去することが、歯周病予防には欠かせません。

前述した、歯ブラシを歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当てる磨き方は、この歯周ポケットの清掃に非常に効果的です。毛先がポケットの入り口に優しく入り込み、内部のプラークをかき出すイメージで磨きましょう。また、歯磨き粉を選ぶ際には、殺菌成分である「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」などが配合されたものも検討してみてください。これらの成分は歯周ポケットの奥に浸透し、歯周病菌を殺菌する効果が期待できます。ご自身の口腔状態に合った製品を選ぶことで、より効果的な歯周病予防につながります。

ステップ2:歯ブラシの死角をなくす補助的清掃用具の活用

毎日の丁寧な歯磨きは歯周病予防の基本ですが、歯ブラシだけではすべてのプラークを除去することは難しいのが現状です。特に、歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークが最も蓄積しやすい「死角」となりがちです。このため、歯ブラシではカバーしきれない部分を清掃するための補助的な清掃用具の活用が不可欠になります。このセクションでは、デンタルフロスや歯間ブラシ、そしてマウスウォッシュといったアイテムをどのように活用すれば良いのか、その役割と効果的な使い方について解説し、セルフケアの質をさらに高める方法をご紹介します。

デンタルフロスと歯間ブラシの使い分け

歯ブラシでは届きにくい歯と歯の間のプラークを除去するために、デンタルフロスと歯間ブラシは非常に有効なツールです。それぞれの特徴を理解し、適切に使い分けることが重要です。

デンタルフロスは、歯と歯が接している部分の隙間が狭い場所に特に適しています。使い方は、フロスを約40cmに切り、両手の中指に巻きつけ、親指と人差し指で1~2cmほどの間隔で持ちます。そして、歯の側面に沿わせるようにゆっくりと挿入し、C字型に巻きつけながら歯ぐきの少し下まで優しく動かして汚れをかき出します。無理に力を入れると歯ぐきを傷つける可能性があるため、注意が必要です。

一方、歯間ブラシは、歯と歯の間の隙間が比較的広い場所や、ブリッジの下など、デンタルフロスでは清掃しにくい部分に適しています。さまざまなサイズがあるため、ご自身の歯間の隙間に合ったものを選ぶことが大切です。無理なく挿入できる最も大きなサイズを選ぶと効果的です。使用する際は、歯間ブラシを歯と歯の間にまっすぐ挿入し、数回前後に動かして汚れを取り除きます。どちらのツールも、どのサイズやタイプがご自身に最適か、一度歯科医院で歯科医師や歯科衛生士に相談してみると良いでしょう。

マウスウォッシュの効果的な使い方

マウスウォッシュ(洗口液)は、歯周病予防の補助的なアイテムとして、口腔内の細菌数を減らし、口臭を抑える効果が期待できます。しかし、マウスウォッシュはあくまで歯磨きやフロスの「補助」であり、これらによる物理的なプラーク除去の代わりにはならないことを理解しておくことが重要です。

マウスウォッシュの効果を最大限に引き出すためには、使用するタイミングが大切です。最も効果的なのは、歯磨きとデンタルフロス、歯間ブラシで物理的に汚れを取り除いた「後」です。これにより、口内の細菌が減った状態で殺菌成分を全体に行き渡らせることができます。使用する際には、製品に記載されている使用量(一般的には10ml~20ml程度)を計り、指定された時間(30秒~1分程度)口に含んでうがいをしましょう。うがい後は、水で口をすすがない方が成分が口内に残り、効果が持続しやすいとされています。毎日のケアにマウスウォッシュを取り入れることで、より清潔な口腔環境を維持し、歯周病のリスクを低減することにつながります。

ステップ3:生活習慣を整え、歯周病に強い体をつくる

歯周病の予防には、毎日の丁寧なセルフケアが不可欠ですが、実は口腔内だけでなく、体全体の健康状態も大きく影響します。歯周病は細菌感染症であるため、体の免疫力が低下すると病気が進行しやすくなるからです。このセクションでは、歯周病のリスクを高める要因として知られる「食生活」と「喫煙」に焦点を当て、これらを見直すことで、歯周病に強い体を作り、健康な口腔環境を維持するための具体的なポイントを解説します。

食生活で気をつけるべきポイント

私たちの食生活は、口腔内の健康に直接的な影響を与えます。特に、糖分を多く含む飲食物の摂取は、歯周病の原因となるプラークの栄養源となり、細菌の増殖を助長します。お菓子やジュースなどを頻繁に口にすることは避け、摂取した際にはなるべく早く歯磨きをするよう心がけましょう。

一方で、歯ぐきの健康を保つためには、バランスの取れた食事が重要です。例えば、ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、健康な歯ぐきを維持するために不可欠です。また、骨を丈夫にするカルシウムも、歯を支える歯槽骨の健康にとって重要です。野菜や果物、乳製品などを積極的に食事に取り入れることをおすすめします。

さらに、よく噛んで食べる習慣も大切です。咀嚼(そしゃく)によって唾液の分泌が促され、唾液の持つ自浄作用が口の中を洗い流し、細菌の増殖を抑える効果が期待できます。これらの食生活のポイントを意識することで、体の中から歯周病に強い環境を作り出すことにつながるでしょう。

禁煙が歯周病予防につながる理由

喫煙は、歯周病を悪化させる最も大きなリスクファクターの一つです。タバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、歯ぐきの血行を悪化させ、酸素や栄養の供給を妨げます。これにより、歯周組織の抵抗力が低下し、細菌への免疫機能も損なわれてしまうため、歯周病が進行しやすくなります。

また、喫煙者は歯ぐきの炎症による出血が抑えられがちです。これは、タバコの血管収縮作用によるもので、歯周病が進行していても自覚症状が出にくく、発見が遅れる原因となることがあります。気づいた時には、病状がかなり進行しているケースも少なくありません。

禁煙は、歯周病の予防だけでなく、すでに発症している歯周病の治療効果を向上させるためにも非常に重要です。禁煙することで、歯ぐきの血行が改善され、組織の修復能力が高まり、歯周病の進行を抑えることができます。口腔内の健康だけでなく、全身の健康を考える上でも、禁煙は大きなメリットをもたらします。

セルフケアだけでは不十分?プロフェッショナルケアの重要性

これまで自宅でできる歯周病予防の方法について詳しく見てきましたが、毎日の丁寧なセルフケアは歯周病予防の基本中の基本です。しかし、それだけで歯周病予防が万全かというと、残念ながらそうではありません。実は、歯ブラシでは取り除けない汚れが存在するのです。

歯周病の原因となるプラークは、時間が経つと唾液中のミネラルと結合して「歯石(しせき)」という硬い塊になります。この歯石は、歯ブラシでは除去できず、表面がザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなる悪循環を生み出します。

歯石を安全かつ確実に除去するには、歯科医院での専門的な処置が不可欠です。プロフェッショナルケアは、ご自身の努力だけでは届かない部分をカバーし、より効果的な歯周病予防を実現するために非常に重要な役割を担っています。

なぜ定期的な歯科検診が必要なのか

定期的な歯科検診は、歯周病予防において欠かせない習慣です。その最大の理由は、ご自身では気づきにくい初期の歯周病を発見し、早期に治療を開始できる「早期発見・早期治療」にあります。

歯周病は初期段階ではほとんど自覚症状がなく進行するため、気づいた時にはかなり進行しているケースが少なくありません。歯科検診では、専門家が歯周ポケットの深さや歯ぐきの状態などを詳しくチェックし、小さな変化も見逃さずに捉えることができます。

また、定期検診ではセルフケアでは取り除けない歯石のクリーニング(PMTC:プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を受けられます。これにより、口の中を清潔な状態に保ち、プラークの再付着を防ぐことができます。さらに、ご自身の口腔状態に合わせた正しい歯磨きの方法や、最適な清掃用具の選び方について、歯科医師や歯科衛生士から個別のアドバイスを受けられるのも大きなメリットです。3~6ヶ月に一度の定期検診を習慣にすることで、将来の歯の健康を長く維持することにつながります。

歯科医院で行う歯周病の基本治療

歯科医院で行われる歯周病の基本治療は、歯周病の進行を食い止め、症状を改善するために重要なステップです。まず、初診時には「検査」が行われます。歯周ポケットの深さを測定するプロービング検査や、歯を支える骨(歯槽骨)の状態を確認するためのレントゲン撮影などを行い、歯周病の進行度合いを正確に把握します。

検査結果に基づき、治療の基本となるのが「スケーリング」と「ルートプレーニング」です。スケーリングは、歯の表面や歯周ポケットの浅い部分に付着した歯石を超音波スケーラーや手用スケーラーと呼ばれる専用の器具で除去する処置です。

歯周病が進行し、歯周ポケットが深くなっている場合には、ルートプレーニングが行われます。これは、歯周ポケットの奥深くにある歯石や感染した組織を徹底的に除去し、歯の根の表面を滑らかに研磨する処置です。根の表面を滑らかにすることで、汚れの再付着を防ぎ、歯ぐきが歯の根にしっかりと密着して回復するのを促します。これらの基本治療によって、歯周病の進行を抑え、歯ぐきの健康を取り戻す土台を築くことができます。

まとめ:今日から始める歯周病予防で、未来の歯を守ろう

今回は、多くの成人が抱える歯周病について、その基礎知識から自宅で実践できる予防法、さらに専門家によるケアの重要性までを詳しくご紹介しました。歯周病は、30代以上の3人に2人が罹患していると言われるほど身近な病ですが、適切な知識と実践によって十分に予防が可能です。大切な歯を失うことのないよう、今日から予防の第一歩を踏み出すことが重要になります。

歯周病予防には、日々の「質の高いセルフケア(丁寧な歯磨きと補助的清掃用具の活用)」、「健康的な生活習慣(食生活の見直しや禁煙)」、そして「定期的なプロフェッショナルケア(歯科検診とクリーニング)」の3つの柱が不可欠です。これらの予防策を生活に取り入れることで、歯周病のリスクを減らし、将来にわたって健康な口腔環境を維持することにつながります。ぜひ、今日からできることから実践し、ご自身の歯と歯ぐきを大切にしてください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

菅野 友太郎 | Yutaro Kanno

国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。

【所属】
5-D Japan 会員
日本臨床歯周病学会 会員
OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
静岡県口腔インプラント研究会 会員
日本臨床補綴学会 会員 会員
日本デジタル歯科学会 会員
SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員

・TISS(Tohoku implant study society) 主催

 

【略歴】
2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
沢田通り歯科・予防クリニック
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648

入れ歯の種類別費用比較:品質と価格のバランスを考える2025年10月18日

入れ歯の種類別費用比較:品質と価格のバランスを考える

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。

歯を失った際の治療法として検討されることの多い入れ歯ですが、「費用はどれくらいかかるのだろう」「種類が多くて何を選べば良いか分からない」と不安に感じる方は少なくありません。この記事では、そのような疑問や不安を解消するために、入れ歯の種類ごとの費用相場について詳しく解説します。

この記事を通じて、保険が適用される入れ歯と、より機能性や審美性を追求できる自費診療の入れ歯の違い、それぞれのメリット・デメリットを深く理解することができます。また、入れ歯以外の治療法であるブリッジやインプラントについても触れ、それぞれの費用や特徴を比較することで、ご自身の状況や希望に合わせた最適な選択ができるよう、幅広い情報を提供していきます。

専門的な知識がなくても分かりやすいように、難しい言葉は使わずに説明していますので、安心して読み進めてください。最終的に、ご自身の予算や生活スタイルに合った品質と価格のバランスの取れた入れ歯を見つけるための知識が身につくでしょう。

はじめに:入れ歯の費用が不安な方へ

歯を失い、いよいよ入れ歯を検討し始めたとき、まず頭に浮かぶのは「費用はどれくらいかかるのだろう」という金銭的な不安ではないでしょうか。特に、年金生活を送られている方にとっては、医療費の出費は家計に大きな影響を与えるため、「高額な費用を支払い続けられるか」「どのような入れ歯を選べば良いか分からない」といった心配は尽きないことと存じます。

確かに、入れ歯にはさまざまな種類があり、それぞれ費用も大きく異なります。しかし、ご安心ください。このページでは、そのような費用に関する不安を解消し、ご自身の状況に最も適した入れ歯を見つけるための手助けをすることを目的としています。保険が適用される入れ歯と自費診療の入れ歯の具体的な費用相場はもちろんのこと、それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説していきます。

さらに、入れ歯以外の治療法であるブリッジやインプラントについても触れ、費用や治療の性質を比較することで、より広い視野でご自身の選択肢を検討できるようになります。この記事を最後までお読みいただくことで、費用面だけでなく、見た目や快適さ、そして将来的なメンテナンスまで含めて、納得のいく入れ歯選びができるような知識と情報を得られることでしょう。

まず知っておきたい!入れ歯の基本的な2つの種類

入れ歯には、大きく分けて「部分入れ歯」と「総入れ歯」の2種類があります。どちらの入れ歯を選ぶかは、残っている歯の状態によって決まります。これらの基本的な違いを理解することが、ご自身に合った入れ歯を見つける第一歩となります。

このセクションでは、それぞれの入れ歯がどのようなものか、その概要を簡単にご紹介します。次のセクションでは、それぞれの入れ歯について、より詳しくその特徴や適用されるケースを解説していきます。

部分入れ歯とは?

部分入れ歯は、1本でもご自身の歯が残っている場合に、失われた歯を補うために使われる入れ歯です。文字通り、お口の一部分に装着します。

この入れ歯の基本的な仕組みは、残っている健康な歯に「クラスプ」と呼ばれる金属のバネをかけて固定するものです。これにより、入れ歯が安定し、食事をしたり会話をしたりする際に外れにくくなります。また、歯ぐきの上に乗る「床」という部分が、失われた歯の代わりとなります。

部分入れ歯は、歯を失った部分にピンポイントで装着できるため、残されたご自身の歯を最大限に活かしながら、お口の機能を回復させたい方に適した治療法と言えるでしょう。

総入れ歯とは?

総入れ歯は、上あごまたは下あごのすべての歯を失ってしまった場合に用いられる入れ歯です。お口の中の歯が一本も残っていない状態のときに、選択される治療法です。

総入れ歯の大きな特徴は、ご自身の歯に固定するバネがない点です。その代わりに、入れ歯の「床」と呼ばれる部分がお口の粘膜にぴったりと吸着することで安定します。特に上あごの総入れ歯は、広範囲で粘膜に密着するため、比較的安定しやすい傾向があります。

すべての歯を失ってしまった方にとって、総入れ歯は食事や会話といった日常の基本的な機能を回復させるために不可欠な存在となります。

【費用で比較】保険適用の入れ歯と自費診療の入れ歯

このセクションでは、保険適用となる入れ歯と、費用はかかりますが機能性や審美性に優れた自費診療の入れ歯について、それぞれの費用、メリット、デメリットを詳しく比較してご紹介します。ご自身のライフスタイルや予算、どのような点を重視したいかによって、最適な入れ歯の選択肢は変わってきます。この比較を通じて、あなたにとって最適な入れ歯を見つけるための判断材料としてお役立てください。

保険適用の入れ歯:費用を抑えたい方向け

入れ歯の費用をできるだけ抑えたいと考える方にとって、保険適用の入れ歯は大変魅力的な選択肢となります。国が定めた診療報酬に基づいているため、経済的な負担を大幅に軽減できるのが最大の特長です。使用できる素材や製作方法には一定の制限がありますが、必要十分な機能は確保されています。このセクションでは、保険適用の入れ歯の費用相場や、具体的なメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。

費用相場(3割負担の場合)

保険適用の入れ歯は、歯科医院や失われた歯の本数、お口の状態によって多少の変動はありますが、一般的には部分入れ歯で5,000円から1万5,000円程度、総入れ歯で1万5,000円から2万円程度が費用の目安となります。これは健康保険の3割負担を適用した場合の金額です。自費診療の入れ歯と比較すると、非常に費用を抑えることができるため、経済的な負担が心配な方にとっては大きな安心材料となります。

メリット・デメリット

保険適用の入れ歯のメリットは、やはり「費用が安い」ことと「治療期間が比較的短い」点です。急ぎで入れ歯が必要な場合や、高額な治療費を捻出するのが難しい場合に、すぐに治療を始められるのは大きな利点と言えるでしょう。

一方、デメリットとしては、使用できる素材に制限がある点が挙げられます。主にプラスチック(レジン)で作られるため、厚みがあり、お口の中に入れたときに違和感を覚えやすいかもしれません。また、プラスチックは熱伝導率が低いため、食事の際に食べ物の温度を感じにくくなることもあります。部分入れ歯の場合、残っている歯に固定するための金属のバネ(クラスプ)が目立ってしまうことがあり、見た目を気にする方には抵抗があるかもしれません。さらに、プラスチックは自費の素材と比較して耐久性が劣る傾向にあるため、破損のリスクがやや高まる可能性もあります。

自費診療の入れ歯:機能性や審美性を重視したい方向け

「入れ歯だと気づかれたくない」「食事をもっと快適に楽しみたい」「できるだけ違和感なく過ごしたい」といった、機能性や審美性を重視する方には、自費診療の入れ歯が有力な選択肢となります。自費診療では、使用できる素材や設計に制限がなく、患者さん一人ひとりのお口の状態や希望に合わせて、オーダーメイドで製作することが可能です。費用は保険適用の場合よりも高額になりますが、その分、見た目の美しさや装着感、耐久性など、多くの面で質の高い入れ歯を得られます。このセクションでは、自費診療の入れ歯の費用相場と、具体的な種類、そしてメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

費用相場

自費診療の入れ歯の費用は、保険適用の場合と比べて高額になります。部分入れ歯の場合、一般的に10万円から30万円程度、総入れ歯の場合は20万円から80万円程度が相場とされています。ただし、これはあくまで目安であり、使用する素材の種類、設計の複雑さ、歯科医院の方針などによって費用は大きく変動します。例えば、特殊な素材を用いたり、より高度な技術を要する入れ歯を選択したりする場合、費用はさらに高くなる傾向があります。そのため、事前に歯科医院でしっかりと見積もりを取り、納得した上で治療を進めることが重要ですのです。

代表的な自費診療の入れ歯の種類と特徴

自費診療の入れ歯には、患者さんの多様なニーズに応えるために、様々な種類が存在します。主なものとしては、金属のバネがない「ノンクラスプデンチャー」、薄くて丈夫な「金属床義歯」、残った歯を最大限に活かす「コーヌスクローネ義歯」、歯茎に優しく吸着性の高い「コンフォート義歯」、そしてインプラントを土台とする「インプラントオーバーデンチャー」などがあります。それぞれの入れ歯は、異なる素材や構造、製作技術が用いられており、見た目、装着感、噛む力、耐久性といった点でそれぞれ独自の強みを持っています。これらの種類については、後ほど各項目で費用相場と特徴を詳しくご紹介します。

メリット・デメリット

自費診療の入れ歯の最大のメリットは、何よりも「見た目が自然で美しい」点です。金属のバネが見えないように設計されたり、歯茎の色に合わせた素材を選べたりするため、入れ歯だとほとんど気づかれない仕上がりにすることが可能です。また、保険適用よりも薄く、軽く作れることが多いため、「装着感に優れ、違和感が少ない」と感じる方が多くいらっしゃいます。金属床義歯のように熱伝導性の高い素材を使えば、食べ物の「味や温度が伝わりやすい」ため、食事をより美味しく楽しめるでしょう。さらに、耐久性の高い素材を使用することで、長期間にわたって安心して使用できる点も大きなメリットです。

一方、デメリットとしては、やはり「費用が高額になる」点が挙げられます。保険適用外となるため、全額自己負担となり、経済的な負担は大きくなります。しかし、長年にわたって快適に使用できることを考えれば、その費用は自身の生活の質への投資と考えることもできます。歯科医師とよく相談し、ご自身のライフスタイルや予算に合った選択をすることが大切です。

種類別に見る自費診療の入れ歯|費用・特徴を解説

このセクションでは、機能性や審美性を重視する方へ向けた自費診療の入れ歯について、それぞれの種類ごとの費用相場と詳しい特徴をご紹介します。ご自身の希望される見た目、快適さ、そして予算などを照らし合わせながら、最適な選択肢を見つけるための参考にしてください。

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャーは、金属製のバネ(クラスプ)を使用しない部分入れ歯です。この入れ歯の最大の特徴は、金属のバネがないため、入れ歯だと周囲に気づかれにくいという点にあります。特に、口を開けた時に金属部分が見えることに抵抗がある方にとって、見た目の自然さは大きなメリットとなります。

使用される素材は、薄くて弾力性のあるプラスチックが多く、歯茎の色に近いものが選ばれます。そのため、装着感も比較的良く、保険適用の入れ歯に比べて違和感が少ないと感じる方が多いです。費用相場は部分入れ歯で10万円〜30万円程度と、自費診療の中では比較的抑えられた価格帯になります。

しかし、素材の性質上、保険適用の入れ歯と同様に耐久性がやや劣る場合があります。また、破損した場合の修理が難しいケースや、長期間使用すると素材が変色したり、吸水して劣化したりする可能性もあります。見た目の美しさと装着感を重視したい方、そして比較的費用を抑えたい方におすすめの入れ歯と言えるでしょう。

金属床義歯

金属床義歯は、入れ歯の土台となる床(しょう)の部分が金属で作られている入れ歯です。保険適用の入れ歯がプラスチックの分厚い土台であるのに対し、金属を使うことで非常に薄く製作できるのが大きな特徴です。この薄さが、お口の中での違和感を大幅に軽減し、舌の動きを妨げにくいため、発音や食事の際の快適性が向上します。

金属は熱伝導率が高いため、食事の際に食べ物の温かさや冷たさが舌に伝わりやすく、より美味しく食事を楽しむことができるというメリットもあります。また、金属はプラスチックに比べて強度が高く、衝撃に強いため、耐久性にも優れています。費用相場は部分入れ歯で20万円〜40万円程度、総入れ歯で30万円〜60万円程度です。

使用される金属の種類には、コバルトクロムやチタンなどがあり、チタンはより生体親和性が高く、金属アレルギーのリスクが低いとされています。ただし、金属部分の修理が複雑になる場合がある点、また金属の種類によっては費用が高くなる点がデメリットとして挙げられます。快適な装着感と食事の質を重視したい方におすすめです。

コーヌスクローネ義歯

コーヌスクローネ義歯は、テレスコープ義歯の一種で、残っているご自身の歯を土台として利用する、非常に安定性の高い部分入れ歯です。この入れ歯の大きな特徴は、残っている歯に金属製の冠(内冠)を被せ、その上に入れ歯側の冠(外冠)をはめ込む二重構造になっている点にあります。この仕組みにより、入れ歯がご自身の歯に吸い付くようにしっかりと固定され、ガタつきがほとんどありません。

金属のバネを使用しないため、見た目にも自然で、入れ歯であると気づかれにくいという審美性の高さもメリットです。また、入れ歯が安定することで、ご自身の歯に近い感覚でしっかりと噛むことができ、外れる心配が少ないため、日常生活での安心感が得られます。費用は非常に高額になる傾向があり、部分入れ歯で50万円〜100万円以上かかることも珍しくありません。

一方で、高度な歯科医師の技術と専門的な設備が必要となるため、対応している歯科医院が限られることがあります。また、土台となる歯を削る必要がありますが、バネによる負担がないため、残った歯へのダメージは少ないと言われています。入れ歯の安定性と審美性、そして噛む力を最大限に追求したい方にとって、非常に有効な選択肢です。

コンフォート義歯(シリコン義歯)

コンフォート義歯、またはシリコン義歯は、入れ歯の裏側、つまり歯茎に接する部分に生体用シリコンの特殊なクッション材を加工した入れ歯です。このシリコンの層が、入れ歯と歯茎の間に柔らかいクッションとなり、噛んだ時の歯茎への衝撃を和らげます。これにより、硬い入れ歯で痛みを感じやすかった方や、歯茎が痩せてしまっている方でも、快適に装着できるようになるのが最大の特徴です。

シリコンの適度な弾力性が吸着力を高めるため、入れ歯が外れにくくなるというメリットもあります。これにより、食事や会話の際にずれにくく、より安心して過ごせます。費用は部分入れ歯で30万円〜60万円程度、総入れ歯で40万円〜80万円程度と、自費診療の中でも比較的高額になります。

しかし、シリコン部分は経年とともに劣化したり、剥がれたり変色したりする可能性があるため、定期的なメンテナンスや、数年ごとのシリコン部分の張り替えが必要になる場合があります。また、汚れが付着しやすい傾向もあるため、丁寧な清掃が求められます。痛みや歯茎への負担を軽減し、快適な装着感を追求したい方に特におすすめの入れ歯です。

インプラントオーバーデンチャー

インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラント(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、そのインプラントを土台として入れ歯を固定する方法です。通常の総入れ歯が歯茎の粘膜だけで吸着するのに対し、インプラントでしっかりと固定されるため、入れ歯の安定性が格段に向上します。

この治療法最大のメリットは、入れ歯が顎にしっかりと固定されることで、食事中や会話中にずれ落ちる心配がほとんどない点です。これにより、ご自身の歯のように強く噛むことができるため、食事の選択肢が広がり、食生活の質が大きく向上します。また、見た目にも自然で、快適な装着感を得られます。

デメリットとしては、顎の骨にインプラントを埋め込むための外科手術が必要になること、治療期間が比較的長くなることが挙げられます。また、費用も自費診療の入れ歯の中でも最も高額になる傾向があり、1本あたりのインプラント費用に加えて入れ歯の費用もかかるため、総額で70万円〜150万円以上になることもあります。外科手術への抵抗がなく、費用よりも安定性と噛む力を最優先したい方にとって、非常に満足度の高い治療法と言えるでしょう。

入れ歯以外の選択肢は?ブリッジ・インプラントとの比較

歯を失ったときの治療法は、入れ歯だけではありません。ブリッジやインプラントといった治療法も選択肢として考えられます。ここでは、それぞれの治療法の費用や特徴を比較しながら解説していきます。ご自身の状況や希望に合った治療法を見つけるための参考にしてください。

ブリッジの特徴と費用

ブリッジ治療は、失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台とし、そこに人工の歯を橋のように連結して装着する方法です。固定式なので、入れ歯のように取り外す手間がなく、ご自身の歯に近い感覚で噛めることが大きな特徴です。

ブリッジのメリットは、固定されているため違和感が少ないことや、比較的短期間で治療が完了することです。一方、デメリットとしては、失った歯の両隣にある健康な歯を削る必要がある点が挙げられます。削られた歯は、将来的に虫歯になりやすくなったり、神経の治療が必要になったりする可能性もあります。

費用については、保険適用の場合、3割負担でおおよそ2万円〜3万円程度が目安です。自費診療のブリッジでは、素材の選択肢が広がり、見た目の美しさや耐久性が向上しますが、費用は25万円〜40万円程度と高額になります。

インプラントの特徴と費用

インプラント治療は、顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。これにより、失った歯を独立して補うことができ、ご自身の歯とほぼ同じように噛めるようになるのが最大の特徴です。

インプラントのメリットは、周囲の健康な歯を削る必要がないこと、ご自身の歯と同じような噛み心地と見た目を再現できること、そして顎の骨の吸収を抑える効果が期待できる点です。デメリットとしては、外科手術が必要であること、治療期間が長くかかること、そして保険が適用されない自費診療のみのため費用が高額になる点が挙げられます。

費用相場は、インプラント1本あたり30万円〜40万円程度が目安となります。手術費用や人工歯の費用が含まれるため、治療を受ける歯科医院や選択するインプラントの種類によって費用は変動します。

入れ歯・ブリッジ・インプラントの比較一覧

これまでご紹介した入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの治療法は、それぞれ費用、治療期間、見た目、快適さなどに違いがあります。ご自身のライフスタイルや、何を最も重視するかによって最適な選択肢は異なりますので、以下の比較表を参考にしながら、ご自身の希望に合う治療法を検討してみてください。

比較表では、「費用」「治療期間」「見た目の自然さ」「快適さ・噛む力」「他の歯への影響」「外科手術の有無」といった項目でそれぞれの治療法を比較しています。ご自身の優先順位と照らし合わせながらご覧いただくと、より治療法の選択がしやすくなります。

後悔しない入れ歯の選び方:5つのチェックポイント

入れ歯を選ぶ際には、費用だけでなく、見た目や装着感、お口の中への影響など、様々な要素を考慮することが大切です。ここでは、ご自身の希望に合った入れ歯を見つけるために押さえておきたい5つのチェックポイントをご紹介します。これらのポイントを参考に、後悔のない選択ができるよう、一緒に考えていきましょう。

1. 費用・予算で選ぶ

入れ歯を選ぶ上で、まず最も気になるのが費用ではないでしょうか。入れ歯の費用は、保険が適用される「保険診療」か、適用されない「自費診療」かによって大きく異なります。初期費用をできるだけ抑えたいと考える方には、保険診療の入れ歯が主な選択肢となります。保険診療の入れ歯は、費用が比較的安価に抑えられ、経済的な負担を軽減できるというメリットがあります。

一方、費用は高くなりますが、長期的な快適さや審美性、機能性を重視したいという場合は、自費診療の入れ歯を検討する価値があります。ご自身の現在の経済状況や、入れ歯にどの程度の予算をかけられるのかを明確にし、費用対効果を十分に考慮することが重要です。また、入れ歯は一度作ったら終わりではなく、将来的に修理や調整が必要になることもありますので、その際の費用も念頭に置いておくことをおすすめします。

2. 見た目の自然さ(審美性)で選ぶ

入れ歯は毎日お口の中に入れるものですから、見た目の自然さは非常に重要な要素です。特に、人とお話しする機会が多い方や、口元の見た目を気にされる方にとっては、審美性は入れ歯選びの大きな決め手となるでしょう。

保険適用の部分入れ歯の場合、歯に固定するための金属製のバネ(クラスプ)が見えてしまうことがあります。これが気になるという方も少なくありません。これに対し、自費診療のノンクラスプデンチャーなどでは、金属のバネを使用しないため、入れ歯だと気づかれにくく、自然な見た目を実現できます。費用は高くなりますが、見た目の美しさを優先したい場合は、自費診療の入れ歯が有力な選択肢となります。

3. 装着感・快適さで選ぶ

食事や会話といった日常生活の質は、入れ歯の装着感や快適さに大きく左右されます。お口に合わない入れ歯は、痛みや違和感を生じさせ、日々の生活にストレスを与えてしまうことがあります。ご自身が入れ歯に何を求めるかによって、快適さの基準も変わってきます。

保険適用の入れ歯は、使用できる素材に制限があるため、厚みが出やすく、お口の中で異物感を感じやすい場合があります。しかし、自費診療の金属床義歯は、金属を使用することで入れ歯を薄く作ることができ、装着時の違和感を軽減できます。また、コンフォート義歯のように、柔らかいシリコン素材で歯茎にかかる負担を和らげ、痛みを軽減するタイプの入れ歯もあります。ご自身がどのような快適さを求めるのかを明確にし、それに合った種類の入れ歯を選ぶことが大切です。

4. 残っている歯への影響で選ぶ

部分入れ歯を検討されている場合、現在残っているご自身の歯への影響も考慮すべき重要なポイントです。保険適用の部分入れ歯では、残っている歯に金属のバネをかけて固定するため、その歯に負担がかかることがあります。長期間使用する中で、バネをかけた歯の寿命が短くなってしまう可能性も否定できません。

一方、自費診療の入れ歯の中には、残っている歯への負担を最小限に抑えることを目的とした種類もあります。例えば、コーヌスクローネ義歯は、残った歯に内冠を被せ、入れ歯の外冠とぴったりはめ込むことで、残存歯を保護しながら入れ歯を安定させます。このように、将来的なお口全体の健康を長期的に見据え、残っている歯を大切にするという観点からも入れ歯を選ぶことが重要になります。

5. 将来的な修理・調整のしやすさで選ぶ

入れ歯は、一度作ったら永続的に使えるものではありません。人間の顎の骨や歯茎は年月とともに変化していくため、それに合わせて入れ歯も定期的な調整や修理が必要になります。長く快適に入れ歯を使い続けるためには、修理や調整のしやすさも考慮に入れるべきポイントです。

一般的に、保険適用の入れ歯は比較的シンプルな構造であるため、修理や調整がしやすい傾向にあります。しかし、自費診療の入れ歯の中には、特殊な構造をしているため、修理が複雑になったり、費用がかさんだりする場合があります。また、特定の歯科医院でしか対応できないケースもあります。長期的な視点で見ると、メンテナンスにかかる手間や費用も選択基準の一つとして考えておくことが、後々の後悔を防ぐことにつながります。

まとめ:自分に合った入れ歯を見つけるために歯科医師に相談しよう

この記事では、入れ歯の費用から種類、さらにはブリッジやインプラントといった他の治療法まで、幅広くご紹介してきました。保険適用の入れ歯は費用を抑えられるものの、見た目や装着感に制限があります。一方、自費診療の入れ歯は、費用は高くなりますが、審美性や機能性に優れ、より快適な日常生活を送るための選択肢が豊富にあります。

どの入れ歯を選ぶかは、皆さんのご予算、見た目へのこだわり、食べ物の美味しさを感じたい、会話を楽しみたいといった生活の質への希望によって、最適なものが異なります。また、今残っているご自身の歯の状態や、顎の骨の状態なども考慮に入れる必要があります。

最終的な選択は、決して一人で抱え込まず、必ず歯科医師にご相談ください。歯科医師は、皆さんの口の中の状態を詳しく診断し、それぞれの入れ歯のメリット・デメリットを専門家の視点からわかりやすく説明してくれます。皆さんの希望に寄り添い、最適な治療計画を一緒に考えてくれる信頼できるパートナーとして、ぜひ歯科医師を頼ってみてください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

菅野 友太郎 | Yutaro Kanno

国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。

【所属】
5-D Japan 会員
日本臨床歯周病学会 会員
OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
静岡県口腔インプラント研究会 会員
日本臨床補綴学会 会員 会員
日本デジタル歯科学会 会員
SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員

・TISS(Tohoku implant study society) 主催

 

【略歴】
2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
沢田通り歯科・予防クリニック
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648

虫歯治療は1回で完了?知っておきたい治療の流れと期間2025年10月11日

虫歯治療は1回で完了?知っておきたい治療の流れと期間

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。

最近、奥歯に痛みを感じ始めたけれど、歯科治療には不安や恐怖心がつきものですよね。また、仕事が忙しい中で「虫歯治療って1回で終わるのかな?」「何度も通院するのは難しいな」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ごく初期の虫歯であれば、たしかに1回の通院で治療が完了する可能性もあります。しかし、残念ながら多くの場合、虫歯の進行度や治療内容によっては複数回の通院が必要となります。この記事では、虫歯治療に必要な回数や期間の目安、なぜ治療が長引くことがあるのか、そしてできるだけ治療期間を短くするための具体的なポイントを分かりやすく解説します。この記事を読んで、ご自身の虫歯治療に対する不安を少しでも和らげ、安心して治療に臨むための一歩を踏み出していただければ幸いです。

虫歯治療が1回で終わらない主な理由

歯科治療は、単に虫歯の穴を埋める作業ではありません。歯の機能と健康を長期的に維持するための、非常に精密で段階的なプロセスが含まれています。そのため、多くの場合、虫歯治療が1回で完了しないのには、いくつかの明確な理由があります。

これから「虫歯の進行度」「詰め物・被せ物の製作時間」「保険診療のルール」という3つの主な理由を詳しく解説します。これらの理由を理解することで、なぜ虫歯治療に複数回の通院が必要になるのか、その全体像を把握していただけるでしょう。各ステップを丁寧に行うことは、治療後の再発を防ぎ、結果的に将来的な通院回数を減らすことにも繋がります。これは、歯科医師が患者さんの歯の健康を第一に考えて治療計画を立てている証でもあります。

理由1:虫歯の進行度によって治療内容が異なるため

虫歯の進行度は、治療の期間を決定づける最も大きな要因の一つです。虫歯にはC0からC4までの5段階があり、進行するほど治療は複雑になり、それに伴い通院回数も増える傾向にあります。

例えば、初期虫歯であるC0(初期う蝕)は歯に穴が開いていない状態で、フッ素塗布やブラッシング指導で歯の再石灰化を促し、経過観察となるため、1回の通院で済む場合があります。しかし、虫歯が象牙質にまで達したC2や、さらに進行して歯の神経にまで及んだC3では、虫歯を取り除く範囲が広がり、神経の処置が必要になるなど、治療が格段に複雑になります。このように、虫歯の進行度と治療の複雑さは比例関係にあり、進行している虫歯ほど時間と回数を要する治療となるのです。

理由2:詰め物・被せ物の製作に時間が必要なため

詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)といった修復物は、治療回数を増やす大きな要因の一つです。虫歯を削って取り除いた後、歯の形を精密に再現するための型取りを行います。この型取りは、患者さんのお口の形に合わせてオーダーメイドの修復物を製作するために不可欠な工程です。

型取りしたデータは歯科技工所に送られ、専門の歯科技工士が一つひとつ丁寧に修復物を作製します。この製作には通常、最低でも1週間程度の期間が必要です。その間、患者さんには仮の詰め物や蓋をして過ごしていただくことになります。そのため、虫歯を削って型取りをする日と、完成した詰め物や被せ物を歯に装着する日で、最低でも2回の通院が必要となるのです。このように、高品質な修復物を作るための専門的な工程が、治療回数に影響を与えています。

理由3:保険診療のルールによる制限があるため

日本の公的医療保険(健康保険)制度には、歯科治療において一度の通院で行える範囲に一定のルールが定められています。これは、患者さんの身体的負担を考慮し、治療の安全性を確保するためのものです。例えば、複数の歯を広範囲にわたって治療する場合や、複雑な処置が必要な場合には、一度にすべての治療を終えるのではなく、あえて複数回に分けて慎重に治療計画を立てることが一般的です。

このような制度上の制限により、歯科医院の方針だけでなく、保険診療という背景からも治療が複数回にわたることがあります。患者さんの健康を守り、質の高い医療を提供するためのルールですので、ご理解いただけると幸いです。

【進行度別】虫歯治療の回数と期間の目安

このセクションでは、虫歯の進行度合いに応じて、治療に必要となる回数や期間の目安を具体的にご説明します。ご自身の虫歯がどの段階にあり、どのような治療がどれくらいの期間で進められるのか、そのイメージを掴んでいただくための参考にしてください。ただし、ここに示される回数や期間はあくまで一般的な目安であり、お口の中の状態、治療部位、治療に対する反応、そして歯科医院の方針によって変動する可能性があることをあらかじめご了承ください。

初期の虫歯(C0〜C1):1回で終わる可能性も

初期の虫歯、特にC0(初期う蝕)やC1(エナメル質う蝕)の段階であれば、治療が1回の通院で完了する可能性が高く、心身への負担も最小限に抑えられます。C0の虫歯は、歯の表面のエナメル質が溶け始めているものの、まだ穴は開いていない状態を指します。この段階では、歯を削る必要はなく、フッ素塗布や毎日の丁寧なブラッシング指導によって、歯の再石灰化を促し、自然治癒を目指すことが可能です。そのため、多くの場合、1回の診察で経過観察の方針が決定され、治療自体は完了となります。

また、C1の虫歯では、エナメル質にごく小さな穴が開いている状態です。この段階でも、虫歯の範囲が非常に小さい場合は、虫歯部分を少し削り取り、その日のうちに白い歯科用プラスチック素材(コンポジットレジン)を直接詰めて形を整えることで、1回の通院で治療を終えることができます。早期に虫歯を発見し対処することが、治療の回数や期間を短くし、ご自身の歯へのダメージを最小限に抑える上で非常に重要だと言えるでしょう。

中等度の虫歯(C2):最低でも2回の通院が必要

虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで達したC2レベルの虫歯では、治療には最低でも2回の通院が必要となることが一般的です。この段階になると、虫歯の範囲が広がるため、削って直接詰める治療では対応が難しくなることが多く、歯型を取って製作する詰め物(インレー)が必要となります。

まず1回目の通院では、虫歯に侵された部分を慎重に削り取り、その後に残った健康な歯の形を精密に型取りします。この型は、患者さま一人ひとりに合わせたオーダーメイドの詰め物を製作するために、歯科技工所に送られます。詰め物の製作には通常、数日から1週間程度の期間を要します。その間、削った歯の保護と食事の際の不便さを軽減するため、仮の詰め物をしていただきます。

そして2回目の通院で、完成したインレーを歯にしっかりと装着し、噛み合わせの調整を行います。このように、詰め物の製作という工程が入るため、C2の虫歯治療は1回では完了せず、複数回の通院が必要となるのです。

神経に達した虫歯(C3):根管治療で複数回の通院が必要

虫歯が歯の内部にある神経(歯髄)まで達してしまったC3レベルの虫歯は、非常に進行した状態であり、「根管治療(歯の根の治療)」と呼ばれる専門的な処置が必要となります。この治療は、感染して炎症を起こした神経や細菌を根管から徹底的に取り除き、内部を清掃・消毒し、最終的に薬剤で密閉するという、非常に精密で時間のかかる一連のプロセスを含みます。

根管の構造は複雑で、個人差も大きいため、治療は複数回に分けて慎重に進められます。具体的には、根管内の消毒作業だけで数回の通院が必要となることも珍しくありません。一般的には、3回から5回、あるいはそれ以上の通院回数が必要となるケースもあります。治療中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありませんが、根管の数や状態によっては長時間の治療となることもあります。

根管治療が無事に完了した後は、その歯を保護し、機能を回復させるために、セラミックや金属などの被せ物(クラウン)を装着する必要があります。この被せ物の製作と装着にも、さらに数回の通院が必要となるため、C3の虫歯治療は全体として長期間にわたる計画的な治療が必要となることをご理解ください。

歯の根だけが残った虫歯(C4):抜歯とその後の処置

虫歯が最終段階まで進行し、歯の頭の部分(歯冠)がほとんど崩壊してしまい、歯の根だけが残ってしまった状態がC4レベルの虫歯です。この段階になると、残念ながら歯を残すことが非常に難しくなり、多くの場合、抜歯という選択肢が取られます。抜歯の処置自体は通常、1回の通院で完了することが多いですが、これで治療が終わりというわけではありません。

失われた歯を放置すると、噛み合わせのバランスが崩れたり、他の歯への負担が増えたりするなど、お口全体の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、抜歯後は、その失われた歯を補うための治療が必要となります。具体的な治療法としては、隣接する歯を削って連結する「ブリッジ」、取り外しが可能な「入れ歯」、そして顎の骨に人工の歯根を埋め込む「インプラント」などがあります。これらの後続治療は、それぞれ数回から数ヶ月の期間を要するため、C4の虫歯は治療開始から完了まで長期間に及ぶことを理解しておく必要があります。

虫歯治療の基本的な流れ

ここからは、虫歯治療がどのような手順で進められるのか、その標準的な流れをステップごとに解説していきます。初診から治療完了までのプロセスを時系列で知ることで、治療の全体像を把握し、これからどのような治療が進むのか見通しを持つことができるでしょう。

具体的なステップとして、まずは「診察・検査と治療計画の立案」を行い、次に「虫歯部分の除去」に進みます。その後は「詰め物・被せ物の型取りと装着」を経て、最終的に「最終調整と経過観察」を行います。

ステップ1:診察・検査と治療計画の立案

虫歯治療の最初の、そして非常に重要なステップは、現在の口腔内の状態を正確に把握するための「診察・検査」です。歯科医師は、目視での確認に加え、レントゲン撮影などを行い、虫歯の深さや広がり、神経への影響などを詳細に診断します。この精密な検査によって、肉眼では見えない部分の虫歯や、歯の根の状態なども確認できるため、適切な治療方針を立てる上で欠かせません。

診断結果が出た後は、歯科医師から患者さんに対して、現在の虫歯の状態、考えられる複数の治療法、それぞれの治療にかかる回数の目安、そして費用について詳しく説明があります。この際に、疑問点や不安なこと、また「仕事が忙しいのでなるべく短期間で終わらせたい」といった希望があれば、遠慮なく歯科医師に相談することが大切です。患者さんが納得し、安心して治療に進めるよう、治療計画を共に立てていきます。

ステップ2:虫歯部分の除去

虫歯治療の中心となるのが「虫歯部分の除去」です。治療中に痛みを感じることがないよう、まずは局所麻酔を施します。麻酔がしっかりと効いていることを確認してから、専用の器具を使って、虫歯に侵された歯質を慎重に削り取っていきます。この作業は非常に精密さが求められ、健康な歯質を可能な限り残しつつ、虫歯だけを確実に取り除くことが重要です。

患者さんの中には、歯を削ることに対して恐怖心や不安を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の歯科治療では、痛みを最小限に抑えるための麻酔や、削る量を抑えるための技術が進んでいます。歯科医師は、患者さんの負担を軽減しながら、虫歯の再発を防ぐために最善を尽くしていますのでご安心ください。

ステップ3:詰め物・被せ物の型取りと装着

虫歯を取り除いた後は、歯の欠損部分を修復するステップに入ります。小さな虫歯(C1など)の場合であれば、虫歯を除去したその場で白い樹脂(コンポジットレジン)を直接詰めて、形を整え、光を当てて固めることで治療が1回で完了することもあります。これは、見た目も自然で、比較的手軽にできる治療法です。

一方で、C2以上の比較的大きな虫歯や、噛む力が強くかかる奥歯の虫歯の場合、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)といった、個々の歯に合わせて製作する修復物が必要になります。この場合、削った歯の形を精密に型取りし、その型を基に歯科技工所で修復物を製作します。最近では、口腔内スキャナーを使って型取りを行う歯科医院も増えており、より正確な修復物の製作が可能になっています。

修復物の製作には、通常1週間程度の時間が必要です。そのため、型取りを行った日とは別の日に、完成した詰め物や被せ物を歯に装着することになります。装着の際には、噛み合わせの調整を行いながら、強力な歯科用接着剤でしっかりと固定し、治療を終えます。

ステップ4:最終調整と経過観察

詰め物やかぶせ物が装着された後、治療は終わりではありません。最後に「最終調整」を行います。これは、新しく装着された修復物が、周囲の歯や、噛み合う歯との間で適切な噛み合わせになっているかを確認し、必要に応じて微調整する作業です。噛み合わせが合っていないと、頭痛や顎関節の痛みにつながったり、他の歯に過度な負担がかかったりする可能性があるため、この調整は非常に重要です。

そして、治療が完了した後も、その歯が問題なく機能しているか、違和感がないかなどを確認するため、定期的な「経過観察」が必要になります。これは、治療した歯だけでなく、口腔全体の健康を長期的に維持していくために欠かせないステップです。定期検診の際に、詰め物やかぶせ物の状態、そして新たな虫歯や歯周病の兆候がないかを確認し、早期に対応することで、将来的な大きなトラブルを防ぐことにつながります。

治療回数や期間を長引かせないためのポイント

ここまで、虫歯治療がなぜ1回で終わらないのか、また虫歯の進行度合いによって治療の回数や期間がどのように変化するのかを詳しくご説明しました。仕事が忙しい方や、なるべく早く治療を終えたいと考えていらっしゃる方にとって、治療期間は大きな関心事ではないでしょうか。このセクションでは、治療回数をできるだけ少なくし、期間を長引かせないために、皆さんが実践できる大切な3つのポイントをご紹介します。

これらのポイントを押さえることで、効率的かつ確実に虫歯治療を完了させ、ご自身の口腔健康を良好に保つことにつながります。

ポイント1:治療を途中で中断しない

治療期間を短縮するための最も重要なポイントの一つは、歯科医師と合意した治療計画に従い、最後まで通院を中断しないことです。痛みを感じなくなると、「もう治った」と思って通院をやめてしまう方がいらっしゃいますが、これは非常に危険です。治療途中で中断してしまうと、仮の詰め物が取れてしまい、そこから細菌が侵入し、虫歯が再発したり悪化したりする可能性が高まります。

もし治療が中断された状態で放置してしまうと、当初は軽い虫歯だったものが神経にまで達してしまい、根管治療が必要になったり、最悪の場合は抜歯に至ったりすることもあります。その結果、治療期間がさらに長引き、治療費もかさんでしまうなど、本末転倒な状況になりかねません。予約した通りに通院し、治療を完結させることが、結果的に最も早く虫歯の悩みを解消する近道であることをご理解ください。

ポイント2:定期検診で早期発見・早期治療を心がける

虫歯治療の回数や期間を根本的に短縮する最も効果的な方法は、治療が必要になる前に問題を早期に発見し、早期に治療を行うことです。これまでご説明した通り、C0やC1といったごく初期の虫歯であれば、歯を削らずに経過観察やフッ素塗布で済んだり、削る量が少なく1回の通院で治療が完了したりする可能性が高まります。

痛みなどの自覚症状がなくても、虫歯は静かに進行していることがあります。定期的に歯科検診を受けることで、歯科医師が初期の虫歯や歯周病の兆候を見つけ出し、小さいうちに適切な処置を施すことができます。これは、将来的にかかる時間や費用、そして心身への負担を大きく減らすための、非常に賢明な予防投資と言えるでしょう。

ポイント3:信頼できる歯科医院に相談する

治療をスムーズに進め、安心して完了させるためには、患者さんの状況に寄り添い、信頼関係を築ける歯科医院を選ぶことが非常に重要です。ご自身の仕事の都合や、歯科治療に対する不安、あるいは「なるべく通院回数を少なくしたい」といった希望を、気兼ねなく相談できる歯科医師を見つけることをおすすめします。

患者さんの事情をしっかりと考慮してくれる歯科医師は、治療計画を立てる際に、可能な範囲で治療を効率的に進める方法や、通院回数をまとめる工夫などを提案してくれることがあります。丁寧な説明(インフォームドコンセント)を徹底し、患者さんが納得した上で治療を提供してくれる歯科医院を選ぶことが、最後まで安心して治療を受け続けるための鍵となります。

まとめ:虫歯治療は早期発見が期間短縮の鍵

これまでお伝えしましたように、虫歯治療が1回の通院で完了することは稀で、多くの場合、複数回の通院が必要です。治療回数は虫歯の進行度によって大きく異なり、C0やC1といったごく初期の虫歯であれば1回で済む可能性もありますが、C2やC3と進行するにつれて治療は複雑になり、回数も期間も増えていきます。

治療が複数回にわたる主な理由としては、虫歯の進行度合いによる治療内容の違い、詰め物やかぶせ物といった修復物の製作に時間が必要なこと、そして保険診療のルールによる制限などが挙げられます。これらのプロセスは、歯の健康を長期間維持するために欠かせないものです。

しかし、治療期間をできるだけ短く、かつ負担を少なくしたいと考えるのであれば、最も重要なのは「定期検診による早期発見」です。自覚症状がない段階で虫歯を見つけることで、削る範囲が少なく、通院回数も少ない治療で済む可能性が高まります。将来の歯の健康と、ご自身の貴重な時間を守るためにも、ぜひ定期的な歯科検診を習慣にしてください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

菅野 友太郎 | Yutaro Kanno

国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。

【所属】
5-D Japan 会員
日本臨床歯周病学会 会員
OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
静岡県口腔インプラント研究会 会員
日本臨床補綴学会 会員 会員
日本デジタル歯科学会 会員
SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員

・TISS(Tohoku implant study society) 主催

 

【略歴】
2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
沢田通り歯科・予防クリニック
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648

末期の歯周病でも完治する?諦めない治療戦略と歯を守る最後の砦2025年10月4日

末期の歯周病でも完治する?諦めない治療戦略と歯を守る最後の砦

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。

歯科検診で末期の歯周病と診断され、不安な気持ちでこのページをご覧になっている方もいらっしゃるかもしれません。歯のぐらつきや歯茎からの出血、口臭などに長年悩まされてきた中で、「もう手遅れかもしれない」「抜歯するしかないのか」と絶望的な気持ちになっている方も少なくないでしょう。

しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。末期の歯周病だからといって、必ずしも全ての歯を失うわけではありませんし、適切な治療と継続的なケアによって、進行を止め、ご自身の歯を長く使い続ける道はまだ残されています。この記事では、末期の歯周病の現状を深く理解し、どのような治療戦略があるのか、そして治療後の健康な状態をどのように維持していくのかを、具体的な情報と希望を交えて解説していきます。

ご自身の口腔内の状況を正しく把握し、歯科医師とともに前向きな治療への一歩を踏み出すための知識と勇気を得ていただければ幸いです。一緒に、大切な歯を守るための最適な道筋を探していきましょう。

「もう手遅れかも…」末期歯周病の現実と希望

歯科検診で末期の歯周病と診断され、「もう自分の歯は残せないのではないか」と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。歯の動揺がひどく、食事にも支障が出始めている状況では、「手遅れなのではないか」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、末期の歯周病と診断されたからといって、すぐに諦める必要はありません。もちろん、状況は深刻ですが、適切な治療と継続的なケアによって、歯周病の進行を食い止め、今ある歯をできるだけ長く維持することは十分に可能です。

このセクションでは、末期歯周病がどのような状態を指すのか、そしてなぜ自然には治らないのか、さらに「完治」という言葉の真の意味と、それでも諦めずに治療に取り組むべき理由について詳しくお話しします。ご自身の状況を正しく理解し、治療への希望を見出すための一歩を踏み出しましょう。

末期の歯周病とはどのような状態?主な症状

末期の歯周病では、歯を支える骨が大きく失われ、歯がグラグラと動揺するようになります。これは、まるで建物の土台が崩れて、柱が不安定になっているような状態です。食事の際に歯が痛んだり、硬いものが噛みにくくなったりと、日常生活にも支障が出始めます。

また、歯茎は大きく腫れ上がり、ブヨブヨとした状態になります。歯磨きの際だけでなく、少し触れただけで出血したり、歯茎を押すと膿が出たりすることもあります。これは、歯周病菌が活発に活動し、炎症が非常に強くなっているサインです。

さらに、口臭がひどくなるのも末期歯周病の典型的な症状の一つです。歯周病菌が作り出すガスや膿が原因となり、周囲の人にも気づかれるほどの強い不快な臭いを放つことがあります。これらの症状は、歯周病がかなり進行していることを示していますので、ご自身の口の中に当てはまるものがあれば、すぐに歯科医院を受診してください。

なぜ自然に治らないのか?歯周病の正体

風邪や軽い切り傷のように、体には自然治癒力が備わっていますが、残念ながら歯周病は自然に治る病気ではありません。その理由は、歯周病が「細菌感染症」であるためです。歯と歯茎の境目にある歯周ポケットの中に潜む歯周病菌が、毒素を出し続けることで歯茎に炎症を引き起こし、最終的には歯を支える顎の骨を溶かしてしまうのです。

一度ポケットの奥深くに入り込んだ歯周病菌や、それらが作り出す歯石は、日々の歯磨きだけでは完全に除去することができません。病気の原因菌が残り続けている限り、炎症は治まることなく進行し続けます。そのため、歯周病を根本的に治療するには、歯科医院で専門的な処置によってこれらの原因菌を徹底的に取り除くことが不可欠なのです。

「完治」は難しい?でも諦めるのは早い理由

末期の歯周病と聞くと、「もう治らないのではないか」と絶望的な気持ちになるかもしれません。「完治」という言葉が、「一度失われた顎の骨が完全に元通りになること」を意味するのであれば、確かにそれは非常に難しい現実です。

しかし、歯周病治療における「治る」とは、病気の進行を止め、歯周病が再発しないようにコントロールされた状態を維持することを指します。適切な治療を受ければ、歯周病は必ずコントロールできる病気です。現在の症状を改善し、これ以上悪化させないようにすることは十分に可能ですし、今あるご自身の歯を可能な限り長く使い続けることも目指せます。

大切なのは、病気をこれ以上進行させないこと、そして現在の状態からより良い方向へ改善していくことです。歯科医師と協力し、諦めずに治療に取り組むことで、あなたの歯と口の健康を取り戻し、維持していくことができるのです。決して諦めずに、前向きな気持ちで治療に臨んでいきましょう。

歯周病が末期に至るまでのメカニズム

このセクションでは、歯周病が初期の段階から、治療がより困難になる末期の状態へと、どのように進行していくのかを詳しくご説明します。ご自身の現在の状態がどのような背景を経てに至ったのかを理解することで、歯周病への知識を深め、今後の治療の必要性をより強く認識していただけることを願っています。

歯肉炎から重度歯周炎へ:静かに進行する病

歯周病はしばしば「静かなる病気」と呼ばれます。その最大の理由は、初期の段階ではほとんど自覚症状がないまま、病気がゆっくりと進行していくからです。まず、歯と歯茎の境目にプラーク(歯垢)が溜まることで歯茎が炎症を起こし、「歯肉炎」という状態になります。この段階では歯茎が赤く腫れたり、歯磨きで出血したりすることがありますが、痛みを感じることは稀です。

歯肉炎を放置すると、炎症は歯茎の奥深くへと進行し、「歯周炎」へと移行します。歯周病菌が出す毒素によって歯を支える骨(歯槽骨)が溶け始め、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる隙間が形成されます。このポケットは深くなるにつれて細菌がさらに繁殖しやすくなり、骨の破壊が加速します。通常、歯肉炎から歯が抜け落ちるまでの進行には15年から30年という長い年月がかかるとされています。

このように、痛みがないまま病気が進むため、多くの方は「気づいた時には末期に近い状態」で歯科医院を受診されます。しかし、自覚症状が少ないからといって放置することは、ご自身の歯を失うことへ直結します。ご自身がこれまでに歯周病に気づけなかったとしても、決してご自身のせいだと責める必要はありません。今からでも、ご自身の歯の状態を深く理解し、適切な治療へと進むことが大切なのです。

顎の骨が溶けるとは?歯周組織で起きていること

末期の歯周病で特に深刻なのが、「顎の骨が溶ける」という現象です。これは、お口の中で静かに進行する、非常に破壊的なプロセスを指します。歯と歯茎の境目に溜まった歯周病菌が、毒素を絶えず放出し続けることで、まず歯茎に炎症を引き起こします。この炎症が長く続くと、体は異物を排除しようと防御反応を起こしますが、その過程で歯を支えている重要な組織が破壊されてしまいます。

具体的には、歯をしっかりと顎の骨に固定している「歯槽骨」と呼ばれる骨が、歯周病菌の出す毒素や体の防御反応によって徐々に溶かされていきます。例えるならば、建物の土台が少しずつ崩れていくような状態です。土台が脆くなると、どれだけ上部が丈夫でも建物は不安定になり、最終的には倒壊してしまいます。歯の場合も同様で、歯槽骨が溶けてしまうと、歯を支えきれなくなり、歯がぐらつき始め、最終的には抜け落ちてしまうのです。

この顎の骨が溶けるメカニズムは、目に見えない歯周ポケットの奥深くで進行するため、ご自身でその変化に気づくことは非常に困難です。しかし、この骨の破壊が歯の喪失に直結するため、歯科医院での専門的な検査を通して、現在の骨の状態を正確に把握し、これ以上の進行を食い止めるための治療を開始することが何よりも重要になります。

気づいた時には手遅れ?発見が遅れる原因

多くの方が「気づいた時には手遅れに近い状態」で歯周病の診断を受けるのは、この病気特有の性質に原因があります。最も大きな要因は、初期の歯肉炎や軽度の歯周炎にはほとんど痛みが伴わないことです。痛みがないため、歯茎からの少しの出血や軽度の腫れを「歯磨きのせい」「疲れているから」と自己判断してしまい、深刻なサインと捉えない方が少なくありません。また、「これくらいはよくあること」と軽視されがちな傾向も、発見を遅らせる一因となっています。

さらに、定期的に歯科検診を受ける習慣がない方も多くいらっしゃいます。歯科医院は「痛くなってから行くところ」という認識が根強く残っているため、自覚症状がない限り、専門家によるチェックを受ける機会が失われがちです。これにより、歯周ポケットの深さや骨の状態といった、ご自身では確認できない重要な情報を知る機会を逸してしまいます。しかし、ご自身がこれまで歯周病に気づけなかったとしても、それは決して特別なことではありません。多くの方が経験することです。大切なのは、これまでのことを悔やむのではなく、今この瞬間にご自身の歯と向き合い、適切な治療へと一歩を踏み出すことです。決して「もう遅い」ということはありません。

諦めないための治療戦略|重度歯周病へのアプローチ

末期の歯周病と診断されても、決して諦める必要はありません。現代の歯科医療には、進行した歯周病に対しても効果的な「治療戦略」が確立されています。ここでは、歯周病をコントロールし、大切な歯を守るための具体的なアプローチをご紹介します。治療は段階的に進められ、「歯周基本治療」「歯周外科治療」「歯周補綴治療」といった、一人ひとりの状態に合わせた最適な方法が選ばれます。これらの治療法を通じて、病気の進行を食い止め、再び口の中の健康を取り戻すことが可能です。希望を捨てずに、私たちと一緒に治療の道筋を見ていきましょう。

すべての基本「歯周基本治療」

歯周病治療において、どのような進行度合いであっても、まず最初に行われるのが「歯周基本治療」です。この治療は、歯周病の原因となる細菌を取り除き、口腔内環境を整えることを目的としています。歯周基本治療は、その後のより専門的な治療の効果を最大限に引き出すための土台作りであり、治療全体の成否を左右する非常に重要なステップとなります。

徹底的な歯石・プラークの除去(スケーリング・ルートプレーニング)

スケーリング・ルートプレーニングは、歯周基本治療の核となる処置です。これは単なる歯の表面のクリーニングではなく、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の間の溝の奥深くに溜まった、細菌の塊であるプラークや、硬く石灰化した歯石を徹底的に除去する専門的な治療です。

この処置では、専用の器具を使って歯周ポケットの奥深くにある歯根の表面まで丁寧に清掃します。歯周病は細菌感染症であるため、この原因菌を物理的に取り除くことが、歯周病の進行を止める上で最も重要になります。スケーリング・ルートプレーニングによって細菌の温床をなくすことで、歯茎の炎症が改善され、健康な状態を取り戻すための第一歩となります。

正しいセルフケアの習得

歯科医院での専門的な治療と同じくらい、いやそれ以上に重要となるのが、ご自身で行う日々のセルフケアです。歯周病は生活習慣病の一面も持ち合わせており、治療を受けて口の中がきれいになっても、毎日のケアを怠れば再発のリスクが高まります。

歯科医師や歯科衛生士は、患者さん一人ひとりの口腔内の状態に合わせた正しい歯磨きの方法や、歯間ブラシ、デンタルフロスなどの補助器具の効果的な使い方を指導します。これらのセルフケアを習得し、実践することで、ご自身が治療の主体となり、歯周病の進行を食い止め、健康な状態を維持する力を得ることができます。

歯を残すための選択肢「歯周外科治療」

歯周基本治療で炎症の改善が見られない、あるいは歯周ポケットが深く、器具が届かないような場合には、「歯周外科治療」が選択肢となります。この治療は、歯周基本治療の限界を超える部分にアプローチし、歯周病の原因をより確実に除去することで、大切な歯を救うための積極的な手段です。外科治療と聞くと不安に感じるかもしれませんが、これは歯を残すための前向きな選択肢と考えてください。

歯茎を切開して汚れを取り除くフラップ手術

フラップ手術は、歯周外科治療の代表的な手法の一つです。この手術では、歯茎を一時的に切開してめくり上げ、歯根の表面や顎の骨を直接目で確認できる状態にします。これにより、非外科的な処置では届きにくかった歯周ポケットの奥深くにある歯石や感染組織、病気に侵された歯肉を、目で確認しながら徹底的に除去することが可能となります。

フラップ手術の最大のメリットは、病気の原因を確実に取り除くことができる点にあります。深く複雑な形状の歯周ポケットでも、直視下で清掃を行うことで、歯周病の進行を効果的に食い止め、歯を安定させることを目指します。

失われた組織の再生を目指す「歯周組織再生療法」

歯周組織再生療法は、歯周病によって失われてしまった顎の骨(歯槽骨)や歯根膜などの歯周組織を、特殊な材料を用いて再生を促すことを目的とした高度な外科治療です。この治療法は、歯周病が進行し、歯を支える骨が大きく失われてしまった場合に検討されます。

すべてのケースに適用できるわけではありませんが、適切な条件が揃えば、再生誘導材料などを利用することで、失われた歯周組織をある程度回復させることが期待できます。これにより、歯の支持組織を再構築し、歯の寿命を延ばす可能性を高める、大きな希望となる選択肢です。

ぐらつく歯を安定させる「歯周補綴治療」

末期の歯周病では、歯を支える骨が少なくなることで、歯がぐらつくことがよくあります。このような動揺が著しい歯に対しては、「歯周補綴治療」が有効な選択肢となります。この治療は、不安定な歯を安定させ、噛む機能を回復させることを目的としています。

具体的な方法としては、ぐらつきのある複数の歯を接着剤や被せ物(クラウン)で連結・固定(暫間固定)することで、お互いを支え合わせます。これにより、一本の歯にかかる負担を分散させ、歯の動揺を抑え、食事や会話時の不快感を軽減することができます。歯周補綴治療は、ぐらつく歯の延命を図り、残された歯をできるだけ長く保つための一助となります。

やむを得ず抜歯となるケースとその後の選択

これまで、末期の歯周病と診断されても、ご自身の歯を残すための様々な治療法についてお話ししてきました。しかし、どんなに手を尽くしても、残念ながらやむを得ず抜歯という選択をしなければならないケースも存在します。抜歯と聞くと、治療の失敗や終わりだと感じてしまうかもしれません。しかし、そうではありません。抜歯は、口内全体の健康を取り戻し、より良い未来を築くための、戦略的な判断の一つとなることがあります。

このセクションでは、どのような場合に抜歯が必要になるのか、そして抜歯後にどのような選択肢があるのかを詳しくご説明します。不安を感じるかもしれませんが、きちんと知識を持つことで、前向きに次のステップを考えることができるようになりますので、ご安心ください。

なぜ抜歯が必要になるのか?

歯周病が末期まで進行すると、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)の吸収が著しく進み、歯がグラグラと動揺するようになります。歯が骨にほとんど支えられていない状態では、歯としての機能を果たせなくなり、食事を噛むことも困難になります。また、痛みや感染が慢性化し、他の健康な歯や全身の健康に悪影響を及ぼすリスクも高まります。このような場合、残っている歯の健康を守り、口内全体の環境を改善するために、抜歯が最善の選択となることがあります。

抜歯は、単に問題を抱えた歯を取り除く行為ではなく、口内環境全体の改善を目的とした重要なステップです。歯周病が進行した状態では、まずお口の中の感染源を徹底的に除去し、炎症を抑えることが何よりも優先されます。問題を抱えた歯をそのままにしておくことで、健康な歯まで危険にさらしてしまうことも考えられます。歯科医師は、精密な検査と診断に基づいて、患者さんのお口の健康を第一に考えた上で、抜歯の必要性を判断します。

歯を失ったまま放置するリスク

もし抜歯をした後に、失った歯をそのまま放置してしまうと、様々なリスクが生じます。まず、歯がない空間ができることで、隣り合う歯がその空隙に向かって倒れ込んできたり、噛み合っていた上下の歯が伸びてきたりして、歯並びや噛み合わせが大きく乱れてしまいます。これは、見た目の問題だけでなく、食事の際に特定の歯に負担が集中したり、清掃がしにくくなることで虫歯や歯周病のリスクが再び高まる原因となります。

さらに、歯がなくなった部分は刺激が伝わらなくなるため、顎の骨(歯槽骨)が徐々に痩せていきます。骨が痩せると、将来的に入れ歯やインプラントなどの治療を検討する際に、選択肢が狭まったり、治療が困難になったりする可能性があります。見た目の面では、歯がないことで口元の印象が変わり、若々しさを損なうこともあります。

長期的に見ると、歯を失ったまま放置することは、栄養バランスの偏りにも繋がります。十分に噛むことができないため、やわらかいものばかりを選んで食べるようになりがちです。また、近年では、残っている歯が少ないと、認知症のリスクが上昇するという研究結果も報告されています。このように、失った歯を放置することは、お口の中だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な方法で補うことが非常に重要です。

失った歯を補う方法(インプラント・ブリッジ・入れ歯)

抜歯によって失われた歯を補う方法はいくつかあり、主に「インプラント」「ブリッジ」「入れ歯」の3つが挙げられます。それぞれの方法には特徴があり、お口の状態や費用、求める機能性によって適した選択肢が異なります。

インプラントは、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する方法です。自分の歯と同じようにしっかりと噛める感覚が得られ、見た目も自然です。しかし、歯周病で顎の骨が極度に吸収されている場合、インプラントを埋め込むための十分な骨の量がないと、骨造成といった追加の治療が必要になることがあります。

ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を削り、橋渡しをするように人工歯を被せる方法です。固定式なので、違和感が少なく、比較的しっかり噛めます。ただし、健康な歯を削る必要がある点や、支えとなる歯に負担がかかる点がデメリットとして挙げられます。また、歯周病で隣の歯が弱っている場合には適さないことがあります。

入れ歯は、失われた歯の数や位置に応じて、部分入れ歯や総入れ歯があります。取り外しができるため、ご自身でお手入れがしやすいという利点があります。費用も比較的抑えられる傾向にあります。しかし、噛む力がインプラントやブリッジに比べて劣ることや、歯周病によって顎の骨が吸収されていると、入れ歯が安定しにくく、使用中に痛みやずれが生じやすい場合があります。どの治療法も一長一短がありますので、歯科医師とよく相談し、ご自身の状態や希望に合った方法を選ぶことが大切です。

歯を守る最後の砦|治療後のメンテナンスと再発防止

歯周病の治療が無事に完了したとしても、それだけで安心とは言えません。むしろ、ここからが「歯を守る最後の砦」となる、長期的な維持管理の始まりです。一度改善したお口の環境をいかに保ち続けるかが、歯の寿命を大きく左右します。再発を防ぎ、手に入れた健康な状態を生涯維持していくための具体的な方法について、これから詳しくご説明します。

治療効果を維持するプロフェッショナルケア(SPT)

歯周病治療によってお口の環境が改善されたとしても、原因菌が完全にいなくなるわけではありません。そのため、治療で得られた良好な状態を維持し、歯周病の再発を早期に発見して対応するために、定期的な「SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)」と呼ばれるプロフェッショナルケアが不可欠となります。

SPTでは、歯科衛生士や歯科医師が歯周ポケットの奥深くまできれいにする専門的なクリーニングを行います。これは、ご自身での歯磨きでは届かない部分の歯石やプラークを除去し、お口の中を常に清潔に保つことを目的としています。日頃からのセルフケアももちろん重要ですが、プロによるケアが加わることで、再発リスクを大幅に低減できるのです。

日々のセルフケアが歯の寿命を決める

どれほど専門的な治療を受けても、その効果を長持ちさせるためには、日々のセルフケアが最も重要になります。歯科医院での治療で一度きれいになったお口の中も、毎日の歯磨きや補助器具を使ったケアを怠れば、再び歯周病菌が増殖し、元の状態に戻ってしまう可能性が高いからです。

正しい歯磨きの方法を習得し、歯間ブラシやデンタルフロスなどを効果的に使う習慣を身につけることが、ご自身の歯を守る最大の力となります。治療を終えた今だからこそ、セルフケアの質を最大限に高め、自分自身の歯を健康に保つという強い意識を持つことが、歯の寿命を延ばす鍵となるのです。

全身の健康との関わり(糖尿病など)

歯周病は、単にお口の中だけの病気ではありません。歯周病菌が血液の流れに乗って全身に広がることで、糖尿病をはじめとする様々な全身疾患に悪影響を及ぼす可能性があることが、近年の研究で明らかになっています。例えば、糖尿病患者さんの場合、歯周病を治療することで血糖値のコントロールが改善されることも報告されています。

また、心疾患や動脈硬化、さらには認知症のリスクを高めるといった関連性も指摘されています。したがって、歯周病の治療と適切な管理を続けることは、単にご自身の歯を守るだけでなく、全身の健康を維持し、より豊かな生活を送るためにも非常に重要な意味を持つのです。

まとめ:末期の歯周病と診断されたら、まずは専門家へ相談を

末期の歯周病と診断されたとき、「もう手遅れかもしれない」と深く落ち込んでしまうかもしれません。しかし、この記事を通して、たとえ末期であっても、適切な治療戦略によって病気の進行を止め、歯を救うための多くの選択肢があることをご理解いただけたことと思います。

治療は、歯科医師との密接な連携のもとに行われる共同作業です。徹底的な歯石除去から歯周外科治療、さらには再生療法まで、さまざまなアプローチを組み合わせることで、失われかけた歯と歯周組織を再建し、機能回復を目指すことが可能です。そして、一度回復した口腔内の健康を維持するためには、治療後のプロフェッショナルケアと、患者さんご自身による日々の丁寧なセルフケアが不可欠となります。

決して諦める必要はありません。大切なことは、一人で悩みを抱え込まず、信頼できる歯科医院を見つけ、専門家とともに最適な治療計画を立てることです。まずは一歩踏み出して、歯科医師に相談することから、ご自身の歯を守るための新たなスタートを切ってください。

 

少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。

 

監修者

菅野 友太郎 | Yutaro Kanno

国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。

【所属】
5-D Japan 会員
日本臨床歯周病学会 会員
OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
静岡県口腔インプラント研究会 会員
日本臨床補綴学会 会員 会員
日本デジタル歯科学会 会員
SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員

・TISS(Tohoku implant study society) 主催

 

【略歴】
2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
沢田通り歯科・予防クリニック
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648