入れ歯の種類別費用比較:品質と価格のバランスを考える2025年10月18日

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。
歯を失った際の治療法として検討されることの多い入れ歯ですが、「費用はどれくらいかかるのだろう」「種類が多くて何を選べば良いか分からない」と不安に感じる方は少なくありません。この記事では、そのような疑問や不安を解消するために、入れ歯の種類ごとの費用相場について詳しく解説します。
この記事を通じて、保険が適用される入れ歯と、より機能性や審美性を追求できる自費診療の入れ歯の違い、それぞれのメリット・デメリットを深く理解することができます。また、入れ歯以外の治療法であるブリッジやインプラントについても触れ、それぞれの費用や特徴を比較することで、ご自身の状況や希望に合わせた最適な選択ができるよう、幅広い情報を提供していきます。
専門的な知識がなくても分かりやすいように、難しい言葉は使わずに説明していますので、安心して読み進めてください。最終的に、ご自身の予算や生活スタイルに合った品質と価格のバランスの取れた入れ歯を見つけるための知識が身につくでしょう。
はじめに:入れ歯の費用が不安な方へ
歯を失い、いよいよ入れ歯を検討し始めたとき、まず頭に浮かぶのは「費用はどれくらいかかるのだろう」という金銭的な不安ではないでしょうか。特に、年金生活を送られている方にとっては、医療費の出費は家計に大きな影響を与えるため、「高額な費用を支払い続けられるか」「どのような入れ歯を選べば良いか分からない」といった心配は尽きないことと存じます。
確かに、入れ歯にはさまざまな種類があり、それぞれ費用も大きく異なります。しかし、ご安心ください。このページでは、そのような費用に関する不安を解消し、ご自身の状況に最も適した入れ歯を見つけるための手助けをすることを目的としています。保険が適用される入れ歯と自費診療の入れ歯の具体的な費用相場はもちろんのこと、それぞれの特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説していきます。
さらに、入れ歯以外の治療法であるブリッジやインプラントについても触れ、費用や治療の性質を比較することで、より広い視野でご自身の選択肢を検討できるようになります。この記事を最後までお読みいただくことで、費用面だけでなく、見た目や快適さ、そして将来的なメンテナンスまで含めて、納得のいく入れ歯選びができるような知識と情報を得られることでしょう。
まず知っておきたい!入れ歯の基本的な2つの種類
入れ歯には、大きく分けて「部分入れ歯」と「総入れ歯」の2種類があります。どちらの入れ歯を選ぶかは、残っている歯の状態によって決まります。これらの基本的な違いを理解することが、ご自身に合った入れ歯を見つける第一歩となります。
このセクションでは、それぞれの入れ歯がどのようなものか、その概要を簡単にご紹介します。次のセクションでは、それぞれの入れ歯について、より詳しくその特徴や適用されるケースを解説していきます。
部分入れ歯とは?
部分入れ歯は、1本でもご自身の歯が残っている場合に、失われた歯を補うために使われる入れ歯です。文字通り、お口の一部分に装着します。
この入れ歯の基本的な仕組みは、残っている健康な歯に「クラスプ」と呼ばれる金属のバネをかけて固定するものです。これにより、入れ歯が安定し、食事をしたり会話をしたりする際に外れにくくなります。また、歯ぐきの上に乗る「床」という部分が、失われた歯の代わりとなります。
部分入れ歯は、歯を失った部分にピンポイントで装着できるため、残されたご自身の歯を最大限に活かしながら、お口の機能を回復させたい方に適した治療法と言えるでしょう。
総入れ歯とは?
総入れ歯は、上あごまたは下あごのすべての歯を失ってしまった場合に用いられる入れ歯です。お口の中の歯が一本も残っていない状態のときに、選択される治療法です。
総入れ歯の大きな特徴は、ご自身の歯に固定するバネがない点です。その代わりに、入れ歯の「床」と呼ばれる部分がお口の粘膜にぴったりと吸着することで安定します。特に上あごの総入れ歯は、広範囲で粘膜に密着するため、比較的安定しやすい傾向があります。
すべての歯を失ってしまった方にとって、総入れ歯は食事や会話といった日常の基本的な機能を回復させるために不可欠な存在となります。
【費用で比較】保険適用の入れ歯と自費診療の入れ歯
このセクションでは、保険適用となる入れ歯と、費用はかかりますが機能性や審美性に優れた自費診療の入れ歯について、それぞれの費用、メリット、デメリットを詳しく比較してご紹介します。ご自身のライフスタイルや予算、どのような点を重視したいかによって、最適な入れ歯の選択肢は変わってきます。この比較を通じて、あなたにとって最適な入れ歯を見つけるための判断材料としてお役立てください。
保険適用の入れ歯:費用を抑えたい方向け
入れ歯の費用をできるだけ抑えたいと考える方にとって、保険適用の入れ歯は大変魅力的な選択肢となります。国が定めた診療報酬に基づいているため、経済的な負担を大幅に軽減できるのが最大の特長です。使用できる素材や製作方法には一定の制限がありますが、必要十分な機能は確保されています。このセクションでは、保険適用の入れ歯の費用相場や、具体的なメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
費用相場(3割負担の場合)
保険適用の入れ歯は、歯科医院や失われた歯の本数、お口の状態によって多少の変動はありますが、一般的には部分入れ歯で5,000円から1万5,000円程度、総入れ歯で1万5,000円から2万円程度が費用の目安となります。これは健康保険の3割負担を適用した場合の金額です。自費診療の入れ歯と比較すると、非常に費用を抑えることができるため、経済的な負担が心配な方にとっては大きな安心材料となります。
メリット・デメリット
保険適用の入れ歯のメリットは、やはり「費用が安い」ことと「治療期間が比較的短い」点です。急ぎで入れ歯が必要な場合や、高額な治療費を捻出するのが難しい場合に、すぐに治療を始められるのは大きな利点と言えるでしょう。
一方、デメリットとしては、使用できる素材に制限がある点が挙げられます。主にプラスチック(レジン)で作られるため、厚みがあり、お口の中に入れたときに違和感を覚えやすいかもしれません。また、プラスチックは熱伝導率が低いため、食事の際に食べ物の温度を感じにくくなることもあります。部分入れ歯の場合、残っている歯に固定するための金属のバネ(クラスプ)が目立ってしまうことがあり、見た目を気にする方には抵抗があるかもしれません。さらに、プラスチックは自費の素材と比較して耐久性が劣る傾向にあるため、破損のリスクがやや高まる可能性もあります。
自費診療の入れ歯:機能性や審美性を重視したい方向け
「入れ歯だと気づかれたくない」「食事をもっと快適に楽しみたい」「できるだけ違和感なく過ごしたい」といった、機能性や審美性を重視する方には、自費診療の入れ歯が有力な選択肢となります。自費診療では、使用できる素材や設計に制限がなく、患者さん一人ひとりのお口の状態や希望に合わせて、オーダーメイドで製作することが可能です。費用は保険適用の場合よりも高額になりますが、その分、見た目の美しさや装着感、耐久性など、多くの面で質の高い入れ歯を得られます。このセクションでは、自費診療の入れ歯の費用相場と、具体的な種類、そしてメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
費用相場
自費診療の入れ歯の費用は、保険適用の場合と比べて高額になります。部分入れ歯の場合、一般的に10万円から30万円程度、総入れ歯の場合は20万円から80万円程度が相場とされています。ただし、これはあくまで目安であり、使用する素材の種類、設計の複雑さ、歯科医院の方針などによって費用は大きく変動します。例えば、特殊な素材を用いたり、より高度な技術を要する入れ歯を選択したりする場合、費用はさらに高くなる傾向があります。そのため、事前に歯科医院でしっかりと見積もりを取り、納得した上で治療を進めることが重要ですのです。
代表的な自費診療の入れ歯の種類と特徴
自費診療の入れ歯には、患者さんの多様なニーズに応えるために、様々な種類が存在します。主なものとしては、金属のバネがない「ノンクラスプデンチャー」、薄くて丈夫な「金属床義歯」、残った歯を最大限に活かす「コーヌスクローネ義歯」、歯茎に優しく吸着性の高い「コンフォート義歯」、そしてインプラントを土台とする「インプラントオーバーデンチャー」などがあります。それぞれの入れ歯は、異なる素材や構造、製作技術が用いられており、見た目、装着感、噛む力、耐久性といった点でそれぞれ独自の強みを持っています。これらの種類については、後ほど各項目で費用相場と特徴を詳しくご紹介します。
メリット・デメリット
自費診療の入れ歯の最大のメリットは、何よりも「見た目が自然で美しい」点です。金属のバネが見えないように設計されたり、歯茎の色に合わせた素材を選べたりするため、入れ歯だとほとんど気づかれない仕上がりにすることが可能です。また、保険適用よりも薄く、軽く作れることが多いため、「装着感に優れ、違和感が少ない」と感じる方が多くいらっしゃいます。金属床義歯のように熱伝導性の高い素材を使えば、食べ物の「味や温度が伝わりやすい」ため、食事をより美味しく楽しめるでしょう。さらに、耐久性の高い素材を使用することで、長期間にわたって安心して使用できる点も大きなメリットです。
一方、デメリットとしては、やはり「費用が高額になる」点が挙げられます。保険適用外となるため、全額自己負担となり、経済的な負担は大きくなります。しかし、長年にわたって快適に使用できることを考えれば、その費用は自身の生活の質への投資と考えることもできます。歯科医師とよく相談し、ご自身のライフスタイルや予算に合った選択をすることが大切です。
種類別に見る自費診療の入れ歯|費用・特徴を解説
このセクションでは、機能性や審美性を重視する方へ向けた自費診療の入れ歯について、それぞれの種類ごとの費用相場と詳しい特徴をご紹介します。ご自身の希望される見た目、快適さ、そして予算などを照らし合わせながら、最適な選択肢を見つけるための参考にしてください。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属製のバネ(クラスプ)を使用しない部分入れ歯です。この入れ歯の最大の特徴は、金属のバネがないため、入れ歯だと周囲に気づかれにくいという点にあります。特に、口を開けた時に金属部分が見えることに抵抗がある方にとって、見た目の自然さは大きなメリットとなります。
使用される素材は、薄くて弾力性のあるプラスチックが多く、歯茎の色に近いものが選ばれます。そのため、装着感も比較的良く、保険適用の入れ歯に比べて違和感が少ないと感じる方が多いです。費用相場は部分入れ歯で10万円〜30万円程度と、自費診療の中では比較的抑えられた価格帯になります。
しかし、素材の性質上、保険適用の入れ歯と同様に耐久性がやや劣る場合があります。また、破損した場合の修理が難しいケースや、長期間使用すると素材が変色したり、吸水して劣化したりする可能性もあります。見た目の美しさと装着感を重視したい方、そして比較的費用を抑えたい方におすすめの入れ歯と言えるでしょう。
金属床義歯
金属床義歯は、入れ歯の土台となる床(しょう)の部分が金属で作られている入れ歯です。保険適用の入れ歯がプラスチックの分厚い土台であるのに対し、金属を使うことで非常に薄く製作できるのが大きな特徴です。この薄さが、お口の中での違和感を大幅に軽減し、舌の動きを妨げにくいため、発音や食事の際の快適性が向上します。
金属は熱伝導率が高いため、食事の際に食べ物の温かさや冷たさが舌に伝わりやすく、より美味しく食事を楽しむことができるというメリットもあります。また、金属はプラスチックに比べて強度が高く、衝撃に強いため、耐久性にも優れています。費用相場は部分入れ歯で20万円〜40万円程度、総入れ歯で30万円〜60万円程度です。
使用される金属の種類には、コバルトクロムやチタンなどがあり、チタンはより生体親和性が高く、金属アレルギーのリスクが低いとされています。ただし、金属部分の修理が複雑になる場合がある点、また金属の種類によっては費用が高くなる点がデメリットとして挙げられます。快適な装着感と食事の質を重視したい方におすすめです。
コーヌスクローネ義歯
コーヌスクローネ義歯は、テレスコープ義歯の一種で、残っているご自身の歯を土台として利用する、非常に安定性の高い部分入れ歯です。この入れ歯の大きな特徴は、残っている歯に金属製の冠(内冠)を被せ、その上に入れ歯側の冠(外冠)をはめ込む二重構造になっている点にあります。この仕組みにより、入れ歯がご自身の歯に吸い付くようにしっかりと固定され、ガタつきがほとんどありません。
金属のバネを使用しないため、見た目にも自然で、入れ歯であると気づかれにくいという審美性の高さもメリットです。また、入れ歯が安定することで、ご自身の歯に近い感覚でしっかりと噛むことができ、外れる心配が少ないため、日常生活での安心感が得られます。費用は非常に高額になる傾向があり、部分入れ歯で50万円〜100万円以上かかることも珍しくありません。
一方で、高度な歯科医師の技術と専門的な設備が必要となるため、対応している歯科医院が限られることがあります。また、土台となる歯を削る必要がありますが、バネによる負担がないため、残った歯へのダメージは少ないと言われています。入れ歯の安定性と審美性、そして噛む力を最大限に追求したい方にとって、非常に有効な選択肢です。
コンフォート義歯(シリコン義歯)
コンフォート義歯、またはシリコン義歯は、入れ歯の裏側、つまり歯茎に接する部分に生体用シリコンの特殊なクッション材を加工した入れ歯です。このシリコンの層が、入れ歯と歯茎の間に柔らかいクッションとなり、噛んだ時の歯茎への衝撃を和らげます。これにより、硬い入れ歯で痛みを感じやすかった方や、歯茎が痩せてしまっている方でも、快適に装着できるようになるのが最大の特徴です。
シリコンの適度な弾力性が吸着力を高めるため、入れ歯が外れにくくなるというメリットもあります。これにより、食事や会話の際にずれにくく、より安心して過ごせます。費用は部分入れ歯で30万円〜60万円程度、総入れ歯で40万円〜80万円程度と、自費診療の中でも比較的高額になります。
しかし、シリコン部分は経年とともに劣化したり、剥がれたり変色したりする可能性があるため、定期的なメンテナンスや、数年ごとのシリコン部分の張り替えが必要になる場合があります。また、汚れが付着しやすい傾向もあるため、丁寧な清掃が求められます。痛みや歯茎への負担を軽減し、快適な装着感を追求したい方に特におすすめの入れ歯です。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラント(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、そのインプラントを土台として入れ歯を固定する方法です。通常の総入れ歯が歯茎の粘膜だけで吸着するのに対し、インプラントでしっかりと固定されるため、入れ歯の安定性が格段に向上します。
この治療法最大のメリットは、入れ歯が顎にしっかりと固定されることで、食事中や会話中にずれ落ちる心配がほとんどない点です。これにより、ご自身の歯のように強く噛むことができるため、食事の選択肢が広がり、食生活の質が大きく向上します。また、見た目にも自然で、快適な装着感を得られます。
デメリットとしては、顎の骨にインプラントを埋め込むための外科手術が必要になること、治療期間が比較的長くなることが挙げられます。また、費用も自費診療の入れ歯の中でも最も高額になる傾向があり、1本あたりのインプラント費用に加えて入れ歯の費用もかかるため、総額で70万円〜150万円以上になることもあります。外科手術への抵抗がなく、費用よりも安定性と噛む力を最優先したい方にとって、非常に満足度の高い治療法と言えるでしょう。
入れ歯以外の選択肢は?ブリッジ・インプラントとの比較
歯を失ったときの治療法は、入れ歯だけではありません。ブリッジやインプラントといった治療法も選択肢として考えられます。ここでは、それぞれの治療法の費用や特徴を比較しながら解説していきます。ご自身の状況や希望に合った治療法を見つけるための参考にしてください。
ブリッジの特徴と費用
ブリッジ治療は、失った歯の両隣にある健康な歯を削って土台とし、そこに人工の歯を橋のように連結して装着する方法です。固定式なので、入れ歯のように取り外す手間がなく、ご自身の歯に近い感覚で噛めることが大きな特徴です。
ブリッジのメリットは、固定されているため違和感が少ないことや、比較的短期間で治療が完了することです。一方、デメリットとしては、失った歯の両隣にある健康な歯を削る必要がある点が挙げられます。削られた歯は、将来的に虫歯になりやすくなったり、神経の治療が必要になったりする可能性もあります。
費用については、保険適用の場合、3割負担でおおよそ2万円〜3万円程度が目安です。自費診療のブリッジでは、素材の選択肢が広がり、見た目の美しさや耐久性が向上しますが、費用は25万円〜40万円程度と高額になります。
インプラントの特徴と費用
インプラント治療は、顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。これにより、失った歯を独立して補うことができ、ご自身の歯とほぼ同じように噛めるようになるのが最大の特徴です。
インプラントのメリットは、周囲の健康な歯を削る必要がないこと、ご自身の歯と同じような噛み心地と見た目を再現できること、そして顎の骨の吸収を抑える効果が期待できる点です。デメリットとしては、外科手術が必要であること、治療期間が長くかかること、そして保険が適用されない自費診療のみのため費用が高額になる点が挙げられます。
費用相場は、インプラント1本あたり30万円〜40万円程度が目安となります。手術費用や人工歯の費用が含まれるため、治療を受ける歯科医院や選択するインプラントの種類によって費用は変動します。
入れ歯・ブリッジ・インプラントの比較一覧
これまでご紹介した入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの治療法は、それぞれ費用、治療期間、見た目、快適さなどに違いがあります。ご自身のライフスタイルや、何を最も重視するかによって最適な選択肢は異なりますので、以下の比較表を参考にしながら、ご自身の希望に合う治療法を検討してみてください。
比較表では、「費用」「治療期間」「見た目の自然さ」「快適さ・噛む力」「他の歯への影響」「外科手術の有無」といった項目でそれぞれの治療法を比較しています。ご自身の優先順位と照らし合わせながらご覧いただくと、より治療法の選択がしやすくなります。
後悔しない入れ歯の選び方:5つのチェックポイント
入れ歯を選ぶ際には、費用だけでなく、見た目や装着感、お口の中への影響など、様々な要素を考慮することが大切です。ここでは、ご自身の希望に合った入れ歯を見つけるために押さえておきたい5つのチェックポイントをご紹介します。これらのポイントを参考に、後悔のない選択ができるよう、一緒に考えていきましょう。
1. 費用・予算で選ぶ
入れ歯を選ぶ上で、まず最も気になるのが費用ではないでしょうか。入れ歯の費用は、保険が適用される「保険診療」か、適用されない「自費診療」かによって大きく異なります。初期費用をできるだけ抑えたいと考える方には、保険診療の入れ歯が主な選択肢となります。保険診療の入れ歯は、費用が比較的安価に抑えられ、経済的な負担を軽減できるというメリットがあります。
一方、費用は高くなりますが、長期的な快適さや審美性、機能性を重視したいという場合は、自費診療の入れ歯を検討する価値があります。ご自身の現在の経済状況や、入れ歯にどの程度の予算をかけられるのかを明確にし、費用対効果を十分に考慮することが重要です。また、入れ歯は一度作ったら終わりではなく、将来的に修理や調整が必要になることもありますので、その際の費用も念頭に置いておくことをおすすめします。
2. 見た目の自然さ(審美性)で選ぶ
入れ歯は毎日お口の中に入れるものですから、見た目の自然さは非常に重要な要素です。特に、人とお話しする機会が多い方や、口元の見た目を気にされる方にとっては、審美性は入れ歯選びの大きな決め手となるでしょう。
保険適用の部分入れ歯の場合、歯に固定するための金属製のバネ(クラスプ)が見えてしまうことがあります。これが気になるという方も少なくありません。これに対し、自費診療のノンクラスプデンチャーなどでは、金属のバネを使用しないため、入れ歯だと気づかれにくく、自然な見た目を実現できます。費用は高くなりますが、見た目の美しさを優先したい場合は、自費診療の入れ歯が有力な選択肢となります。
3. 装着感・快適さで選ぶ
食事や会話といった日常生活の質は、入れ歯の装着感や快適さに大きく左右されます。お口に合わない入れ歯は、痛みや違和感を生じさせ、日々の生活にストレスを与えてしまうことがあります。ご自身が入れ歯に何を求めるかによって、快適さの基準も変わってきます。
保険適用の入れ歯は、使用できる素材に制限があるため、厚みが出やすく、お口の中で異物感を感じやすい場合があります。しかし、自費診療の金属床義歯は、金属を使用することで入れ歯を薄く作ることができ、装着時の違和感を軽減できます。また、コンフォート義歯のように、柔らかいシリコン素材で歯茎にかかる負担を和らげ、痛みを軽減するタイプの入れ歯もあります。ご自身がどのような快適さを求めるのかを明確にし、それに合った種類の入れ歯を選ぶことが大切です。
4. 残っている歯への影響で選ぶ
部分入れ歯を検討されている場合、現在残っているご自身の歯への影響も考慮すべき重要なポイントです。保険適用の部分入れ歯では、残っている歯に金属のバネをかけて固定するため、その歯に負担がかかることがあります。長期間使用する中で、バネをかけた歯の寿命が短くなってしまう可能性も否定できません。
一方、自費診療の入れ歯の中には、残っている歯への負担を最小限に抑えることを目的とした種類もあります。例えば、コーヌスクローネ義歯は、残った歯に内冠を被せ、入れ歯の外冠とぴったりはめ込むことで、残存歯を保護しながら入れ歯を安定させます。このように、将来的なお口全体の健康を長期的に見据え、残っている歯を大切にするという観点からも入れ歯を選ぶことが重要になります。
5. 将来的な修理・調整のしやすさで選ぶ
入れ歯は、一度作ったら永続的に使えるものではありません。人間の顎の骨や歯茎は年月とともに変化していくため、それに合わせて入れ歯も定期的な調整や修理が必要になります。長く快適に入れ歯を使い続けるためには、修理や調整のしやすさも考慮に入れるべきポイントです。
一般的に、保険適用の入れ歯は比較的シンプルな構造であるため、修理や調整がしやすい傾向にあります。しかし、自費診療の入れ歯の中には、特殊な構造をしているため、修理が複雑になったり、費用がかさんだりする場合があります。また、特定の歯科医院でしか対応できないケースもあります。長期的な視点で見ると、メンテナンスにかかる手間や費用も選択基準の一つとして考えておくことが、後々の後悔を防ぐことにつながります。
まとめ:自分に合った入れ歯を見つけるために歯科医師に相談しよう
この記事では、入れ歯の費用から種類、さらにはブリッジやインプラントといった他の治療法まで、幅広くご紹介してきました。保険適用の入れ歯は費用を抑えられるものの、見た目や装着感に制限があります。一方、自費診療の入れ歯は、費用は高くなりますが、審美性や機能性に優れ、より快適な日常生活を送るための選択肢が豊富にあります。
どの入れ歯を選ぶかは、皆さんのご予算、見た目へのこだわり、食べ物の美味しさを感じたい、会話を楽しみたいといった生活の質への希望によって、最適なものが異なります。また、今残っているご自身の歯の状態や、顎の骨の状態なども考慮に入れる必要があります。
最終的な選択は、決して一人で抱え込まず、必ず歯科医師にご相談ください。歯科医師は、皆さんの口の中の状態を詳しく診断し、それぞれの入れ歯のメリット・デメリットを専門家の視点からわかりやすく説明してくれます。皆さんの希望に寄り添い、最適な治療計画を一緒に考えてくれる信頼できるパートナーとして、ぜひ歯科医師を頼ってみてください。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。
【所属】
・5-D Japan 会員
・日本臨床歯周病学会 会員
・OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
・静岡県口腔インプラント研究会 会員
・日本臨床補綴学会 会員 会員
・日本デジタル歯科学会 会員
・SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員
・TISS(Tohoku implant study society) 主催
【略歴】
・2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
・2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
・2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
・2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任
平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
『沢田通り歯科・予防クリニック』
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648
虫歯治療は1回で完了?知っておきたい治療の流れと期間2025年10月11日

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。
最近、奥歯に痛みを感じ始めたけれど、歯科治療には不安や恐怖心がつきものですよね。また、仕事が忙しい中で「虫歯治療って1回で終わるのかな?」「何度も通院するのは難しいな」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ごく初期の虫歯であれば、たしかに1回の通院で治療が完了する可能性もあります。しかし、残念ながら多くの場合、虫歯の進行度や治療内容によっては複数回の通院が必要となります。この記事では、虫歯治療に必要な回数や期間の目安、なぜ治療が長引くことがあるのか、そしてできるだけ治療期間を短くするための具体的なポイントを分かりやすく解説します。この記事を読んで、ご自身の虫歯治療に対する不安を少しでも和らげ、安心して治療に臨むための一歩を踏み出していただければ幸いです。
虫歯治療が1回で終わらない主な理由
歯科治療は、単に虫歯の穴を埋める作業ではありません。歯の機能と健康を長期的に維持するための、非常に精密で段階的なプロセスが含まれています。そのため、多くの場合、虫歯治療が1回で完了しないのには、いくつかの明確な理由があります。
これから「虫歯の進行度」「詰め物・被せ物の製作時間」「保険診療のルール」という3つの主な理由を詳しく解説します。これらの理由を理解することで、なぜ虫歯治療に複数回の通院が必要になるのか、その全体像を把握していただけるでしょう。各ステップを丁寧に行うことは、治療後の再発を防ぎ、結果的に将来的な通院回数を減らすことにも繋がります。これは、歯科医師が患者さんの歯の健康を第一に考えて治療計画を立てている証でもあります。
理由1:虫歯の進行度によって治療内容が異なるため
虫歯の進行度は、治療の期間を決定づける最も大きな要因の一つです。虫歯にはC0からC4までの5段階があり、進行するほど治療は複雑になり、それに伴い通院回数も増える傾向にあります。
例えば、初期虫歯であるC0(初期う蝕)は歯に穴が開いていない状態で、フッ素塗布やブラッシング指導で歯の再石灰化を促し、経過観察となるため、1回の通院で済む場合があります。しかし、虫歯が象牙質にまで達したC2や、さらに進行して歯の神経にまで及んだC3では、虫歯を取り除く範囲が広がり、神経の処置が必要になるなど、治療が格段に複雑になります。このように、虫歯の進行度と治療の複雑さは比例関係にあり、進行している虫歯ほど時間と回数を要する治療となるのです。
理由2:詰め物・被せ物の製作に時間が必要なため
詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)といった修復物は、治療回数を増やす大きな要因の一つです。虫歯を削って取り除いた後、歯の形を精密に再現するための型取りを行います。この型取りは、患者さんのお口の形に合わせてオーダーメイドの修復物を製作するために不可欠な工程です。
型取りしたデータは歯科技工所に送られ、専門の歯科技工士が一つひとつ丁寧に修復物を作製します。この製作には通常、最低でも1週間程度の期間が必要です。その間、患者さんには仮の詰め物や蓋をして過ごしていただくことになります。そのため、虫歯を削って型取りをする日と、完成した詰め物や被せ物を歯に装着する日で、最低でも2回の通院が必要となるのです。このように、高品質な修復物を作るための専門的な工程が、治療回数に影響を与えています。
理由3:保険診療のルールによる制限があるため
日本の公的医療保険(健康保険)制度には、歯科治療において一度の通院で行える範囲に一定のルールが定められています。これは、患者さんの身体的負担を考慮し、治療の安全性を確保するためのものです。例えば、複数の歯を広範囲にわたって治療する場合や、複雑な処置が必要な場合には、一度にすべての治療を終えるのではなく、あえて複数回に分けて慎重に治療計画を立てることが一般的です。
このような制度上の制限により、歯科医院の方針だけでなく、保険診療という背景からも治療が複数回にわたることがあります。患者さんの健康を守り、質の高い医療を提供するためのルールですので、ご理解いただけると幸いです。
【進行度別】虫歯治療の回数と期間の目安
このセクションでは、虫歯の進行度合いに応じて、治療に必要となる回数や期間の目安を具体的にご説明します。ご自身の虫歯がどの段階にあり、どのような治療がどれくらいの期間で進められるのか、そのイメージを掴んでいただくための参考にしてください。ただし、ここに示される回数や期間はあくまで一般的な目安であり、お口の中の状態、治療部位、治療に対する反応、そして歯科医院の方針によって変動する可能性があることをあらかじめご了承ください。
初期の虫歯(C0〜C1):1回で終わる可能性も
初期の虫歯、特にC0(初期う蝕)やC1(エナメル質う蝕)の段階であれば、治療が1回の通院で完了する可能性が高く、心身への負担も最小限に抑えられます。C0の虫歯は、歯の表面のエナメル質が溶け始めているものの、まだ穴は開いていない状態を指します。この段階では、歯を削る必要はなく、フッ素塗布や毎日の丁寧なブラッシング指導によって、歯の再石灰化を促し、自然治癒を目指すことが可能です。そのため、多くの場合、1回の診察で経過観察の方針が決定され、治療自体は完了となります。
また、C1の虫歯では、エナメル質にごく小さな穴が開いている状態です。この段階でも、虫歯の範囲が非常に小さい場合は、虫歯部分を少し削り取り、その日のうちに白い歯科用プラスチック素材(コンポジットレジン)を直接詰めて形を整えることで、1回の通院で治療を終えることができます。早期に虫歯を発見し対処することが、治療の回数や期間を短くし、ご自身の歯へのダメージを最小限に抑える上で非常に重要だと言えるでしょう。
中等度の虫歯(C2):最低でも2回の通院が必要
虫歯がエナメル質の下にある象牙質まで達したC2レベルの虫歯では、治療には最低でも2回の通院が必要となることが一般的です。この段階になると、虫歯の範囲が広がるため、削って直接詰める治療では対応が難しくなることが多く、歯型を取って製作する詰め物(インレー)が必要となります。
まず1回目の通院では、虫歯に侵された部分を慎重に削り取り、その後に残った健康な歯の形を精密に型取りします。この型は、患者さま一人ひとりに合わせたオーダーメイドの詰め物を製作するために、歯科技工所に送られます。詰め物の製作には通常、数日から1週間程度の期間を要します。その間、削った歯の保護と食事の際の不便さを軽減するため、仮の詰め物をしていただきます。
そして2回目の通院で、完成したインレーを歯にしっかりと装着し、噛み合わせの調整を行います。このように、詰め物の製作という工程が入るため、C2の虫歯治療は1回では完了せず、複数回の通院が必要となるのです。
神経に達した虫歯(C3):根管治療で複数回の通院が必要
虫歯が歯の内部にある神経(歯髄)まで達してしまったC3レベルの虫歯は、非常に進行した状態であり、「根管治療(歯の根の治療)」と呼ばれる専門的な処置が必要となります。この治療は、感染して炎症を起こした神経や細菌を根管から徹底的に取り除き、内部を清掃・消毒し、最終的に薬剤で密閉するという、非常に精密で時間のかかる一連のプロセスを含みます。
根管の構造は複雑で、個人差も大きいため、治療は複数回に分けて慎重に進められます。具体的には、根管内の消毒作業だけで数回の通院が必要となることも珍しくありません。一般的には、3回から5回、あるいはそれ以上の通院回数が必要となるケースもあります。治療中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありませんが、根管の数や状態によっては長時間の治療となることもあります。
根管治療が無事に完了した後は、その歯を保護し、機能を回復させるために、セラミックや金属などの被せ物(クラウン)を装着する必要があります。この被せ物の製作と装着にも、さらに数回の通院が必要となるため、C3の虫歯治療は全体として長期間にわたる計画的な治療が必要となることをご理解ください。
歯の根だけが残った虫歯(C4):抜歯とその後の処置
虫歯が最終段階まで進行し、歯の頭の部分(歯冠)がほとんど崩壊してしまい、歯の根だけが残ってしまった状態がC4レベルの虫歯です。この段階になると、残念ながら歯を残すことが非常に難しくなり、多くの場合、抜歯という選択肢が取られます。抜歯の処置自体は通常、1回の通院で完了することが多いですが、これで治療が終わりというわけではありません。
失われた歯を放置すると、噛み合わせのバランスが崩れたり、他の歯への負担が増えたりするなど、お口全体の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、抜歯後は、その失われた歯を補うための治療が必要となります。具体的な治療法としては、隣接する歯を削って連結する「ブリッジ」、取り外しが可能な「入れ歯」、そして顎の骨に人工の歯根を埋め込む「インプラント」などがあります。これらの後続治療は、それぞれ数回から数ヶ月の期間を要するため、C4の虫歯は治療開始から完了まで長期間に及ぶことを理解しておく必要があります。
虫歯治療の基本的な流れ
ここからは、虫歯治療がどのような手順で進められるのか、その標準的な流れをステップごとに解説していきます。初診から治療完了までのプロセスを時系列で知ることで、治療の全体像を把握し、これからどのような治療が進むのか見通しを持つことができるでしょう。
具体的なステップとして、まずは「診察・検査と治療計画の立案」を行い、次に「虫歯部分の除去」に進みます。その後は「詰め物・被せ物の型取りと装着」を経て、最終的に「最終調整と経過観察」を行います。
ステップ1:診察・検査と治療計画の立案
虫歯治療の最初の、そして非常に重要なステップは、現在の口腔内の状態を正確に把握するための「診察・検査」です。歯科医師は、目視での確認に加え、レントゲン撮影などを行い、虫歯の深さや広がり、神経への影響などを詳細に診断します。この精密な検査によって、肉眼では見えない部分の虫歯や、歯の根の状態なども確認できるため、適切な治療方針を立てる上で欠かせません。
診断結果が出た後は、歯科医師から患者さんに対して、現在の虫歯の状態、考えられる複数の治療法、それぞれの治療にかかる回数の目安、そして費用について詳しく説明があります。この際に、疑問点や不安なこと、また「仕事が忙しいのでなるべく短期間で終わらせたい」といった希望があれば、遠慮なく歯科医師に相談することが大切です。患者さんが納得し、安心して治療に進めるよう、治療計画を共に立てていきます。
ステップ2:虫歯部分の除去
虫歯治療の中心となるのが「虫歯部分の除去」です。治療中に痛みを感じることがないよう、まずは局所麻酔を施します。麻酔がしっかりと効いていることを確認してから、専用の器具を使って、虫歯に侵された歯質を慎重に削り取っていきます。この作業は非常に精密さが求められ、健康な歯質を可能な限り残しつつ、虫歯だけを確実に取り除くことが重要です。
患者さんの中には、歯を削ることに対して恐怖心や不安を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現在の歯科治療では、痛みを最小限に抑えるための麻酔や、削る量を抑えるための技術が進んでいます。歯科医師は、患者さんの負担を軽減しながら、虫歯の再発を防ぐために最善を尽くしていますのでご安心ください。
ステップ3:詰め物・被せ物の型取りと装着
虫歯を取り除いた後は、歯の欠損部分を修復するステップに入ります。小さな虫歯(C1など)の場合であれば、虫歯を除去したその場で白い樹脂(コンポジットレジン)を直接詰めて、形を整え、光を当てて固めることで治療が1回で完了することもあります。これは、見た目も自然で、比較的手軽にできる治療法です。
一方で、C2以上の比較的大きな虫歯や、噛む力が強くかかる奥歯の虫歯の場合、詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)といった、個々の歯に合わせて製作する修復物が必要になります。この場合、削った歯の形を精密に型取りし、その型を基に歯科技工所で修復物を製作します。最近では、口腔内スキャナーを使って型取りを行う歯科医院も増えており、より正確な修復物の製作が可能になっています。
修復物の製作には、通常1週間程度の時間が必要です。そのため、型取りを行った日とは別の日に、完成した詰め物や被せ物を歯に装着することになります。装着の際には、噛み合わせの調整を行いながら、強力な歯科用接着剤でしっかりと固定し、治療を終えます。
ステップ4:最終調整と経過観察
詰め物やかぶせ物が装着された後、治療は終わりではありません。最後に「最終調整」を行います。これは、新しく装着された修復物が、周囲の歯や、噛み合う歯との間で適切な噛み合わせになっているかを確認し、必要に応じて微調整する作業です。噛み合わせが合っていないと、頭痛や顎関節の痛みにつながったり、他の歯に過度な負担がかかったりする可能性があるため、この調整は非常に重要です。
そして、治療が完了した後も、その歯が問題なく機能しているか、違和感がないかなどを確認するため、定期的な「経過観察」が必要になります。これは、治療した歯だけでなく、口腔全体の健康を長期的に維持していくために欠かせないステップです。定期検診の際に、詰め物やかぶせ物の状態、そして新たな虫歯や歯周病の兆候がないかを確認し、早期に対応することで、将来的な大きなトラブルを防ぐことにつながります。
治療回数や期間を長引かせないためのポイント
ここまで、虫歯治療がなぜ1回で終わらないのか、また虫歯の進行度合いによって治療の回数や期間がどのように変化するのかを詳しくご説明しました。仕事が忙しい方や、なるべく早く治療を終えたいと考えていらっしゃる方にとって、治療期間は大きな関心事ではないでしょうか。このセクションでは、治療回数をできるだけ少なくし、期間を長引かせないために、皆さんが実践できる大切な3つのポイントをご紹介します。
これらのポイントを押さえることで、効率的かつ確実に虫歯治療を完了させ、ご自身の口腔健康を良好に保つことにつながります。
ポイント1:治療を途中で中断しない
治療期間を短縮するための最も重要なポイントの一つは、歯科医師と合意した治療計画に従い、最後まで通院を中断しないことです。痛みを感じなくなると、「もう治った」と思って通院をやめてしまう方がいらっしゃいますが、これは非常に危険です。治療途中で中断してしまうと、仮の詰め物が取れてしまい、そこから細菌が侵入し、虫歯が再発したり悪化したりする可能性が高まります。
もし治療が中断された状態で放置してしまうと、当初は軽い虫歯だったものが神経にまで達してしまい、根管治療が必要になったり、最悪の場合は抜歯に至ったりすることもあります。その結果、治療期間がさらに長引き、治療費もかさんでしまうなど、本末転倒な状況になりかねません。予約した通りに通院し、治療を完結させることが、結果的に最も早く虫歯の悩みを解消する近道であることをご理解ください。
ポイント2:定期検診で早期発見・早期治療を心がける
虫歯治療の回数や期間を根本的に短縮する最も効果的な方法は、治療が必要になる前に問題を早期に発見し、早期に治療を行うことです。これまでご説明した通り、C0やC1といったごく初期の虫歯であれば、歯を削らずに経過観察やフッ素塗布で済んだり、削る量が少なく1回の通院で治療が完了したりする可能性が高まります。
痛みなどの自覚症状がなくても、虫歯は静かに進行していることがあります。定期的に歯科検診を受けることで、歯科医師が初期の虫歯や歯周病の兆候を見つけ出し、小さいうちに適切な処置を施すことができます。これは、将来的にかかる時間や費用、そして心身への負担を大きく減らすための、非常に賢明な予防投資と言えるでしょう。
ポイント3:信頼できる歯科医院に相談する
治療をスムーズに進め、安心して完了させるためには、患者さんの状況に寄り添い、信頼関係を築ける歯科医院を選ぶことが非常に重要です。ご自身の仕事の都合や、歯科治療に対する不安、あるいは「なるべく通院回数を少なくしたい」といった希望を、気兼ねなく相談できる歯科医師を見つけることをおすすめします。
患者さんの事情をしっかりと考慮してくれる歯科医師は、治療計画を立てる際に、可能な範囲で治療を効率的に進める方法や、通院回数をまとめる工夫などを提案してくれることがあります。丁寧な説明(インフォームドコンセント)を徹底し、患者さんが納得した上で治療を提供してくれる歯科医院を選ぶことが、最後まで安心して治療を受け続けるための鍵となります。
まとめ:虫歯治療は早期発見が期間短縮の鍵
これまでお伝えしましたように、虫歯治療が1回の通院で完了することは稀で、多くの場合、複数回の通院が必要です。治療回数は虫歯の進行度によって大きく異なり、C0やC1といったごく初期の虫歯であれば1回で済む可能性もありますが、C2やC3と進行するにつれて治療は複雑になり、回数も期間も増えていきます。
治療が複数回にわたる主な理由としては、虫歯の進行度合いによる治療内容の違い、詰め物やかぶせ物といった修復物の製作に時間が必要なこと、そして保険診療のルールによる制限などが挙げられます。これらのプロセスは、歯の健康を長期間維持するために欠かせないものです。
しかし、治療期間をできるだけ短く、かつ負担を少なくしたいと考えるのであれば、最も重要なのは「定期検診による早期発見」です。自覚症状がない段階で虫歯を見つけることで、削る範囲が少なく、通院回数も少ない治療で済む可能性が高まります。将来の歯の健康と、ご自身の貴重な時間を守るためにも、ぜひ定期的な歯科検診を習慣にしてください。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。
【所属】
・5-D Japan 会員
・日本臨床歯周病学会 会員
・OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
・静岡県口腔インプラント研究会 会員
・日本臨床補綴学会 会員 会員
・日本デジタル歯科学会 会員
・SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員
・TISS(Tohoku implant study society) 主催
【略歴】
・2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
・2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
・2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
・2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任
平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
『沢田通り歯科・予防クリニック』
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648
末期の虫歯でも諦めないで!知っておきたい治療オプションと回復への道2025年9月20日

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。
長年放置してしまった奥歯の痛みが急に悪化し、「もしかしてもう抜くしかないのかもしれない」と、不安や絶望を感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。歯科医院へ行くことを恐れて先延ばしにしていた結果、激しい痛みに襲われ、治療の選択肢が残されていないのではないかと考えてしまうのも無理はありません。しかし、現代の歯科医療は日々進化しており、末期と思えるような状態の虫歯でも、大切な歯を残すためのさまざまな治療オプションが存在します。この記事では、虫歯の進行レベルや放置するリスクを詳しく解説し、抜歯を避けて歯を回復させるための具体的な治療法、そして治療後の適切なケアまでを網羅的にご紹介いたします。ぜひこの記事を読み進めていただき、回復への一歩を踏み出すための希望を見つけてください。
もしかして末期かも?虫歯の進行レベルとセルフチェック
長年、歯医者に行くのをためらっていたり、奥歯の痛みを放置してしまったりすると、「もしかして自分の虫歯は末期なのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、ご自身の虫歯の状態を正しく把握することが、適切な治療への第一歩です。ここでは、虫歯の進行レベルを詳しく見ていき、ご自身の状況と照らし合わせてみましょう。
虫歯の進行は5段階(C0〜C4)
虫歯は、その進行度合いによってC0からC4までの5つの段階に分類されます。それぞれの段階で歯の状態や自覚症状、そして治療法が異なりますので、ご自身の歯がどの段階にあるのかを理解することは、適切な治療を受ける上で非常に重要です。
C0は「初期う蝕」と呼ばれ、歯の表面にあるエナメル質がわずかに溶け始めた状態です。この段階では、まだ穴があいておらず、痛みもありません。フッ素塗布や毎日の適切なブラッシングによって、歯の再石灰化(溶け出したミネラルが再び歯に戻ること)を促すことで、削らずに健康な状態に戻せる可能性があります。
C1は「エナメル質う蝕」で、エナメル質に小さな穴があき始めた状態です。見た目には黒ずみとして現れることがありますが、まだ神経には達していないため、ほとんど痛みを感じることはありません。しかし、C0とは異なり自然に治ることはなく、放置すると進行してしまうため、この段階での治療が推奨されます。
C2は「象牙質う蝕」と呼ばれ、虫歯がエナメル質の内側にある象牙質まで進行した状態です。この段階になると、冷たいものや甘いものがしみたり、軽い痛みを感じたりすることがあります。治療としては、虫歯の部分を削り取り、レジン(歯科用プラスチック)を詰めたり、インレー(詰め物)で修復したりします。
C3は「歯髄炎」とも呼ばれる重度の虫歯で、虫歯が歯の神経(歯髄)まで達してしまった状態です。激しい痛みを伴うことが多く、温かいものがしみたり、何もしていなくてもズキズキとした痛みが続いたりします。この段階まで進行すると、多くの場合、歯の神経を取り除く「根管治療」が必要になります。根管治療によって歯の神経を保護できれば、歯を残すことが可能になります。
C4は「残根状態」とされ、虫歯によって歯の大部分が崩壊し、歯の根だけが残っている末期の状態です。この段階まで来ると、神経が完全に死んでしまっているため、激しい痛みは一時的になくなることがあります。しかし、感染は歯の根の奥深くで続いており、周囲の骨や歯茎に炎症を引き起こす可能性があります。
末期の虫歯(C4)とはどんな状態?
C4レベルの虫歯は、一般的に「末期の虫歯」と呼ばれる状態です。この段階では、歯の頭の部分である歯冠がほとんど破壊され、歯茎の中に歯の根だけが残っている状態を指します。見た目にも歯が大きく失われていることが明らかで、食べ物がうまく噛めない、発音がしにくいといった機能的な問題も生じやすくなります。
末期の虫歯になると、C3段階で経験したような激しい痛みが一時的になくなることがあります。これは、虫歯菌によって歯の神経が完全に死んでしまい、痛みを感じる機能が失われたためです。痛みがなくなったからといって治ったわけではなく、むしろ感染は根の内部で静かに進行しています。この状態を放置すると、歯の根の先に膿がたまったり、歯茎が腫れたり、さらには全身に影響を及ぼすような炎症を引き起こす可能性が高まります。
このように、見た目に歯がほとんどなくなり、痛みも感じないC4の状態は、決して「治った」わけではありません。歯の内部では細菌が活動し続けており、放置すれば周囲の組織や全身の健康に深刻な問題を引き起こすリスクがあるため、早急な歯科治療が必要です。
末期の虫歯を放置する深刻なリスク|歯だけでなく全身への影響も
末期の虫歯を放置することは、単に歯を失うという局所的な問題にとどまらず、身体全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。痛みがないからと治療を先延ばしにすると、予期せぬ全身疾患のリスクを高めることにもつながりかねません。ここでは、末期の虫歯を放置することで生じる、歯と全身へのリスクについて詳しく見ていきましょう。
激しい痛みや歯の喪失
末期の虫歯を放置すると、一度落ち着いたかに見えた痛みが再び襲ってくることがあります。歯の神経が死んでしまうと痛みは一時的に収まりますが、死んだ神経の周囲では細菌が活発に繁殖し続け、歯の根の先に膿が溜まる「根尖性歯周炎」を引き起こします。これにより、ズキズキとした激しい痛みや、顔が腫れるといった症状が突然現れることがあります。
この状態がさらに進行すると、歯を支える骨が溶かされてしまい、最終的には歯の保存が不可能となり、抜歯せざるを得なくなります。一度失われた歯は二度と元に戻ることはなく、食べる楽しみや発音に影響が出るだけでなく、周囲の健康な歯への負担も増え、口腔全体のバランスが崩れてしまうという直接的な損失につながります。
顎の骨や全身の病気につながる可能性
歯の根の先に溜まった細菌は、歯の内部に留まらず、周囲の組織へと広がっていくことがあります。特に顎の骨にまで感染が及ぶと「顎骨骨髄炎」という重篤な炎症を引き起こし、骨が破壊される可能性があります。また、上顎の奥歯の虫歯が原因で、鼻の横にある空洞(副鼻腔)に細菌が広がり「副鼻腔炎」を発症することもあります。これにより、鼻詰まりや頭痛、顔面の痛みといった症状が現れることがあります。
さらに、口腔内の細菌感染は、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。虫歯の細菌が血管内に侵入すると、血流に乗って全身を巡り、心臓や脳に到達する可能性があります。これにより、「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった、命に関わる全身疾患のリスクを高めることが指摘されています。口腔内の問題は、単なる口の中の病気として捉えるのではなく、全身の健康と密接に関連している重要な問題として認識することが大切です。
諦めるのはまだ早い!末期虫歯でも歯を残すための治療法
末期の虫歯だと診断され、「もう抜くしかない」と諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現代の歯科医療は日々進化しており、重度に進行した虫歯でも、大切な歯をできる限り残すためのさまざまな治療法が存在します。このセクションでは、抜歯を回避し、ご自身の歯を長く使い続けるための具体的な治療法について詳しくご説明します。希望を捨てずに、ご自身の歯を守るための一歩を踏み出しましょう。
根管治療|歯の根を綺麗にして土台として残す
根管治療は、虫歯が歯の神経(歯髄)まで到達し、炎症や感染を起こしてしまった場合に行われる、歯を残すための重要な治療法です。歯の内部にある歯髄は、細菌に感染すると激しい痛みを引き起こすだけでなく、放置すれば根の周りの骨にまで感染が広がる可能性があります。根管治療では、この感染した歯髄を取り除き、歯の根の中を徹底的に清掃・消毒することで、歯を抜かずに保存することを目指します。
具体的な手順としては、まず歯の頭の部分に小さな穴を開け、専用の器具を使って感染した神経や血管を慎重に取り除きます。その後、根管内を丁寧に洗浄し、細菌の除去と消毒を行います。根管は非常に複雑な形状をしているため、この清掃・消毒作業は歯科医師の経験と技術が求められる工程です。近年では、マイクロスコープなどの精密機器を用いることで、肉眼では見えにくい根管の細部まで確認しながら治療を進めることが可能になり、治療の成功率を高めています。
根管内が完全に清潔になったことを確認した後、再び細菌が侵入しないように、特殊な薬剤を隙間なく充填し、密閉します。この処置によって、歯の根は健全な状態に戻り、その上に土台を立てて最終的な被せ物(クラウン)を装着することで、再び食べ物を噛む機能を取り戻すことができます。このように根管治療は、重度の虫歯によって失われかけた歯の命を救い、ご自身の歯を長く使い続けることを可能にする、非常に有効な治療法です。
エクストルージョン|歯茎に埋まった歯を引っ張り出して活用する
エクストルージョン(歯根挺出術)は、虫歯が歯茎よりも深く進行し、歯の大部分が失われてしまった末期のC4レベルの虫歯に対して、抜歯を回避して歯を残すための応用的な治療法です。通常、歯茎のラインよりも深い位置にある歯質には被せ物を装着することが難しく、抜歯が選択されるケースが多いのですが、エクストルージョンを用いることで、ご自身の歯を救える可能性があります。
この治療法は、矯正治療の原理を応用したもので、歯茎の中に埋まってしまった歯の根を、ゆっくりと時間をかけて歯茎の外に引っ張り出す処置を行います。具体的には、歯の根に小さな矯正装置を取り付け、弱い力で持続的に引っ張ることで、歯の根と周囲の歯周組織を健全な位置まで移動させます。これにより、被せ物を装着するための健康な歯質を確保し、再び機能的な歯として活用できるようになります。
エクストルージョンは、歯の移動に数週間から数ヶ月の期間を要しますが、ご自身の歯を温存できるという大きなメリットがあります。抜歯によるインプラントやブリッジといった外科的な処置を避けたい方にとって、非常に有効な選択肢となります。ただし、歯の根の状態や周囲の骨の状態によっては適用できない場合もありますので、歯科医師とよく相談し、ご自身のケースに合った治療法を選択することが大切です。
再根管治療|過去の治療部分の再感染に対応する
一度根管治療を受けたにもかかわらず、再び歯の根の内部で問題が生じてしまった場合に行われるのが「再根管治療」です。これは、以前の根管治療が不完全であったり、何らかの原因で根管内に細菌が再侵入してしまったりした場合に必要となります。例えば、根管の形態が複雑で前回の治療で細菌を取り残してしまったり、被せ物の隙間から細菌が入り込んでしまったりするケースが考えられます。
再根管治療では、まず歯に装着されている被せ物や土台を慎重に除去し、以前の根管治療で充填された薬剤をすべて取り除きます。その後、改めて根管内を徹底的に清掃し、消毒します。初回よりもさらに複雑で精密な作業が求められるため、マイクロスコープや歯科用CTといった高度な医療機器を使用することが多いです。これにより、肉眼では見逃しがちな根管の細かな部分や、感染源を正確に特定し、徹底的に除去することを目指します。
この治療は、通常の根管治療よりも時間と手間がかかりますが、再び歯の機能を回復させ、抜歯を避けるための重要な手段となります。成功すれば、ご自身の歯を長期間にわたって使い続けることが可能になります。過去の治療で再発してしまったからといってすぐに諦めるのではなく、再根管治療によって歯を残せる可能性があることをぜひ知っておいてください。
やむを得ず抜歯となった場合の治療選択肢
これまで、末期の虫歯でも歯を残すためのさまざまな治療法をご紹介してきましたが、残念ながら、どんなに手を尽くしても歯を残すことが難しいケースも存在します。もし抜歯という選択を余儀なくされたとしても、どうぞご安心ください。失ってしまった歯の機能や見た目を回復させるための優れた方法が、現代の歯科医療にはいくつも用意されています。大切なのは、ご自身の状況に最も適した治療法を見つけ、再び笑顔で食事ができる毎日を取り戻すことです。このセクションでは、抜歯後に検討できる主な治療選択肢について詳しくご紹介します。
インプラント|自分の歯のように噛める
インプラント治療は、抜歯によって失われた歯の機能と見た目を回復させるための、現代歯科医療における非常に優れた選択肢の一つです。この治療法では、まず歯がなくなった顎の骨に、チタン製の人工の歯根を埋め込みます。この人工歯根は、生体親和性の高いチタンで作られているため、数ヶ月の期間を経て周囲の骨としっかりと結合します。
骨と結合した人工歯根は、まるで天然の歯の根のように安定した土台となり、その上にセラミックなどで作られた人工の歯を取り付けます。インプラントの最大の利点は、周囲の健康な歯を削る必要がない点です。ブリッジのように隣の歯を支えにする必要がないため、残っている健康な歯に負担をかけることなく、独立して機能させることができます。
これにより、ご自身の歯とほとんど変わらない感覚で食事を楽しむことができ、硬いものもしっかりと噛み砕くことが可能です。また、見た目も自然で審美性にも非常に優れているため、口元の美しさを保ちたい方にも選ばれることが多い治療法と言えるでしょう。
ブリッジ|両隣の歯を支えにする
ブリッジは、抜歯によって失われた歯の機能を回復させるための伝統的な治療法の一つです。この治療法は、文字通り「橋を架ける」ように、失われた歯の両隣に残っている健康な歯を削って土台にし、そこに人工の歯を連結して装着します。土台となる歯に被せる冠と、失われた部分を補うダミーの歯が一体となっており、しっかりと固定されるため、安定して噛むことができます。
ブリッジのメリットとしては、インプラント手術のように外科的な処置を必要としないため、治療期間が比較的短く、費用もインプラントより抑えられる傾向にある点が挙げられます。また、固定式であるため、入れ歯のように取り外しの手間がなく、比較的違和感が少ないと感じる方もいらっしゃいます。
一方で、デメリットも存在します。失われた歯を補うために、両隣の健康な歯を削らなければならないため、健全な歯質を失うことになります。また、ブリッジを支える歯には、失われた歯の分の負担もかかるため、将来的にその歯に問題が生じるリスクも考慮に入れる必要があります。さらに、ブリッジの下に食べかすが挟まりやすく、清掃がしにくい場合があるため、虫歯や歯周病のリスクが高まることもあります。
入れ歯|取り外し可能な人工の歯
入れ歯(部分床義歯)は、抜歯によって失われた歯を補うための、取り外し可能な人工の歯です。残っている歯に金属製のバネ(クラスプ)などをかけて固定するタイプが一般的で、多くの歯を失った場合や、広範囲にわたる欠損の場合に適用されることが多いです。
入れ歯のメリットは、他の治療法に比べて健康な歯を大きく削る必要がない、または削らずに済むケースがある点です。また、比較的安価で製作できるため、費用面での負担を抑えたい方にとって選択しやすい治療法と言えます。外科手術を伴わないため、身体への負担も少ないという利点もあります。
しかし、入れ歯にはデメリットも存在します。最もよく挙げられるのが、装着時の違和感です。特に使い始めは異物感を感じやすく、慣れるまでに時間がかかることがあります。また、毎日の食事の後には取り外して洗浄する必要があり、清掃の手間がかかります。さらに、硬いものが噛みにくかったり、会話中に外れてしまったりする可能性があるため、QOL(生活の質)に影響を及ぼす場合もあります。定期的な調整や作り直しが必要になることも理解しておくことが大切です。
末期虫歯の治療に関するQ&A|痛み・費用・期間の不安を解消
末期の虫歯と診断されたとき、治療への一歩を踏み出すのをためらう最大の要因は、「治療は痛いのではないか」「どれくらいの費用がかかるのか」「治療期間はどれくらい必要なのか」といった不安ではないでしょうか。ここでは、そのような治療に対する具体的な疑問にお答えすることで、患者様が安心して歯科医院へ向かえるよう、疑問の解消と背中を押すお手伝いをいたします。
Q. 治療中の痛みはどれくらい?麻酔は効くの?
歯医者での治療を想像すると、多くの方が「痛い」というイメージをお持ちかもしれません。特に末期の虫歯治療と聞くと、その痛みへの恐怖は一層大きくなることと思います。しかし、現代の歯科治療では、治療中の痛みを極力抑えるためのさまざまな工夫が凝らされていますのでご安心ください。
治療を行う際には、強力な局所麻酔を使用します。この麻酔がしっかり効けば、治療中に痛みを感じることはほとんどありません。また、麻酔注射の針が刺さる瞬間のチクッとした痛みを軽減するために、事前に歯茎の表面に塗るタイプの「表面麻酔」を用いることがあります。さらに、麻酔液を注入する速度をコントロールできる電動麻酔器や、非常に細い注射針を使用することで、注射自体の痛みも最小限に抑えるよう配慮されています。歯科医院では、患者さんの「痛い」という気持ちに寄り添い、少しでも快適に治療を受けていただけるよう努力していますので、不安な点があれば遠慮なく歯科医師やスタッフに伝えてくださいね。
Q. 治療にかかる費用と期間の目安は?
末期の虫歯治療にかかる費用と期間は、選択する治療法や、保険が適用されるかどうかによって大きく異なります。例えば、歯を残すための根管治療を行う場合と、抜歯後にインプラントを選択する場合では、費用も期間も大きく変わってきます。
具体的な金額をここで一概にお伝えすることは難しいのですが、一般的に保険診療であれば自己負担額が抑えられます。一方、より精密な治療や審美性を重視する自由診療では、費用は高くなる傾向にあります。治療期間についても、数回の通院で済むこともあれば、数か月にわたるケースもあります。大切なことは、治療を開始する前に、歯科医師から治療計画とそれに伴う費用や期間について、しっかりと説明を受けることです。疑問や不安があれば納得がいくまで質問し、ご自身の状況に合った治療法を選択できるようにしましょう。
Q. 歯医者への恐怖心が強い場合はどうすればいい?
「歯医者が怖い」という気持ちは、決して珍しいことではありません。過去の経験や、治療中の痛みがトラウマとなり、歯科医院から足が遠のいてしまう方も多くいらっしゃいます。しかし、末期の虫歯は放置するとさらに状態が悪化してしまうため、勇気を出して一歩を踏み出すことが大切です。
もし、歯科医院への恐怖心が強い場合は、予約をする際にその旨を伝えたり、初診時の問診票に正直に記入したりすることをおすすめします。多くの歯科医院では、そのような患者さんへの対応に慣れており、治療中に声かけをこまめに行ったり、気分が悪くなったらすぐに治療を中断したりするなど、細やかな配慮をしてくれます。また、リラックス効果のある「笑気麻酔」を取り扱っている歯科医院もありますので、ご自身の状況に合った歯科医院を探してみるのも良いでしょう。決して一人で抱え込まず、プロのサポートを受けながら治療を進めていきましょう。
二度と虫歯を繰り返さないためにできること
大変な末期虫歯の治療を乗り越えられたことは、ご自身の健康を深く考えられた素晴らしい一歩です。しかし、治療は終わりではなく、ここからが虫歯を二度と繰り返さないための新たな始まりです。大切な歯を守り、健康な状態を長く維持していくためには、日々のセルフケアと、歯科医院でのプロフェッショナルケア、この二つの取り組みが欠かせません。これから、具体的な予防策について詳しくご紹介いたしますので、ぜひご自身の生活に取り入れてみてください。
治療後から始める正しいセルフケア習慣
治療が終わった後、まず実践していただきたいのは、ご自宅での正しいセルフケア習慣を身につけることです。日々のブラッシングやフロッシングは、虫歯の主な原因となるプラーク(歯垢)を除去し、お口の中を清潔に保つために非常に重要です。
正しいブラッシングとは、単に歯ブラシを動かすだけではありません。歯科医院で「歯磨き指導(TBI)」を受けて、ご自身の歯並びや磨き癖に合わせた適切なブラッシング方法を学ぶことを強くおすすめします。自分に合った歯ブラシの選び方や、歯と歯の間に溜まりやすい汚れを効率的に落とすデンタルフロスや歯間ブラシの使い方も、この機会にマスターしましょう。これらのケアを毎日欠かさず行うことで、虫歯の再発リスクを大幅に減らすことができます。
虫歯予防の鍵となる歯科医院での定期検診
ご自宅でのセルフケアはもちろん大切ですが、それだけでは防ぎきれない虫歯や歯周病もあります。そこで不可欠となるのが、歯科医院での定期検診とプロフェッショナルケアです。
定期検診の主な目的は、万が一、新しい虫歯や歯周病の兆候が見つかったとしても、ごく初期の段階で発見し、負担の少ない簡単な治療で済ませることです。また、ご自身の歯磨きでは落としきれない頑固な歯石や、細菌の塊であるバイオフィルムは、歯科医院の専門機器による「プロフェッショナルクリーニング(PMTC)」で徹底的に除去することができます。さらに、虫歯に強い歯質を作る「フッ素塗布」も、定期的に受けることで虫歯予防効果を高めます。
このように、歯科医院は「歯が痛くなってから行く場所」ではなく、「歯の健康を維持し、虫歯にならないために通う場所」として捉えることが、二度と末期虫歯を繰り返さないための最も効果的な鍵となります。
まとめ:まずは勇気を出して歯科医院へ相談し、回復への一歩を踏み出そう
この記事では、末期の虫歯であっても、決して諦める必要はないことをお伝えしてきました。歯の進行度合いはC0からC4の5段階に分かれ、たとえC4の段階であっても、根管治療やエクストルージョンといった専門的な治療によって、歯を残せる可能性が十分にあります。また、もし抜歯が必要になったとしても、インプラント、ブリッジ、入れ歯など、失われた機能を回復するための様々な選択肢があることをご紹介しました。
治療に対する痛みや費用、期間への不安は当然のことですが、現代の歯科医療はこれらの懸念を和らげるための進歩を遂げています。治療後の再発を防ぐためには、日々の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが欠かせません。何よりも大切なのは、一人で悩まず、まずは勇気を出して歯科医院を訪れ、専門医に相談することです。あなたの回復への道のりは、そこから始まります。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。
【所属】
・5-D Japan 会員
・日本臨床歯周病学会 会員
・OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
・静岡県口腔インプラント研究会 会員
・日本臨床補綴学会 会員 会員
・日本デジタル歯科学会 会員
・SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員
・TISS(Tohoku implant study society) 主催
【略歴】
・2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
・2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
・2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
・2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任
平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
『沢田通り歯科・予防クリニック』
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648
親知らず、必要?2018年9月13日
大田区大森北 沢田通り歯科 院長の菅野です
すごく奥の歯なので、磨きにくく、虫歯になってしまう方も少なくありません。
今日は、そんな親知らずの治療法についてお話しします。
まず第一に、残す事を考えます、つまり、虫歯や歯周病の治療です。
ただし、その時に重要なのが、何故そうなってしまったか、ですよね。
奥歯なので、器具が届きにくかったり、見えなかったり。
原因が分からないまま治療をすると、再度同じ状態になってしまうことは、容易に想像できると思います。
第2に、残す欠点が大きい場合、
抜歯を考えます
せっかく残しておいても、例えば、手前の健康な歯を虫歯にしてしまうような環境では、もったいありませんよね。
実際の治療では、以上のような内容をもう少し詳しく、ご自身の口腔内写真を用いてご説明させていただき、最終的にどの治療法にするかは、患者さんに決定して頂いています。
もし心配な方やお悩みがある方は、是非歯科医院で診査、診断をお受けになってみてはいかがでしょうか。
ちなみに親知らずは、移植歯としても使用できる可能性があります。
その内容については、また後日、ご案内させて頂きます。
プラークコントロールをしよう2018年9月11日
大田区大森北の沢田通り歯科 歯科衛生士の吉川です。
世界ではiPhone XSの発売が発表され3次元顔認証の機能が話題を集めていますね。
顔認証の技術的なことは私には詳しく分かりませんが、指紋と同様にお顔の骨格の大小や歯の並び方は人それぞれに違います。
当医院では検診の際に、お口の疾患や口臭の原因となる「プラーク」の付着部位を確認するため歯に色を付けて、みなさんに分かりやすいようご説明をさせて頂いております。
これは、毎日のブラッシングの際、ご自身のお口の中でどの辺りにプラークが付着し易いかブラッシングの癖を確認していただき、上手にプラークコントロールして頂けるようになってもらうことが目的です。また、プラークが付着している所は虫歯や歯周病のリスクも高まりますので、気をつけていただきたい部位を確認するためでもあります。
虫歯や歯周病などのお口の疾患は予防できる病気です。
お口の疾患を予防するためには、ご自身でプラークコントロールを行っていくことが重要です。忙しい生活の中でいかに効率良く、そして、毎日継続して行っていけるセルフケアの方法もとても重要となってきます。人それぞれ違うお口の環境において、どの辺りにプラークが付着し易いのかも人によって違います。そのために私たちプロの目から見た、みなさまに合ったセルフケアの方法もご提案させていただきます。
同時に目標となる数値もみることができますので、ブラッシングテクニックの向上につながる目標設定を定めることもできます。ぜひ、今、ご自身が、どれくらいプラークコントロールできているか、確認してみてはいかがでしょうか!?
上手にプラークコントロールできるようになると、将来、残る歯の本数は必ず変わります!
そのために、歯科医師と連携しながら私たち歯科衛生士がお手伝いさせていただきます。
トリートメント2018年8月25日
こんにちは。
大田区大森北の沢田通り歯科 歯科衛生士の深谷です。
暑い日が再び戻って来ましたが,皆様いかがお過ごしでしょうか?
私事ですが、最近ばっさりと髪を切りましてロングからショートにしてみました。
理由はご想像にお任せしますが⋯
普段のケアはずいぶん楽になりました‼️
髪を洗ったり,トリートメントをしたり
他にもスキンケアで顔や体のケアをされている方は多いと思います。
が、、歯にもトリートメントがあるのをご存知ですか?
当医院では、髪やお肌をいたわるのと同様に
歯のトリートメントを受けることができます。
保険のクリーニングでも歯のツルツル感は感じていただけますが
トリートメントを使用した後はそれ以上の歯のツヤを実感していただけると思います!!
ご興味がある方は、お気軽にスタッフまでお声がけくださいね



こんにちは、今回は「親知らず」についてお話したいと思います。
親知らずは、前から数えて8番目に出てくる歯で、平均的には18歳くらいで頭が見えてきます。智歯とも呼ばれています。