インプラント治療にかかる期間は?各ステップの所要時間と全体の流れを解説2025年11月15日

平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」です。
歯を失った際の治療法として、インプラント治療を検討されている方も多いのではないでしょうか。インプラント治療は、失った歯の機能と見た目を回復させる有効な選択肢ですが、「治療期間が長くかかるのではないか」「治療中は日常生活に影響があるのではないか」といった不安を感じることもあるかもしれません。
この記事では、インプラント治療にかかる具体的な期間について、治療の各ステップごとの所要時間や全体の流れを詳しく解説します。なぜ治療期間に個人差が生まれるのか、どのようなケースで期間が長引くのかといった疑問にもお答えしますので、インプラント治療への理解を深め、安心して治療に臨むための一助となれば幸いです。
インプラント治療の期間は最短3ヶ月~1年以上が目安
インプラント治療の完了までにかかる期間は、最短で3ヶ月、長い場合は1年以上と患者様の状態によって大きく異なります。これは、インプラントが顎の骨としっかりと結合するまでの治癒期間が、個人差や治療部位によって異なるためです。一般的には、下顎で約6ヶ月、上顎で約12ヶ月が目安とされています。
上顎の骨は下顎に比べて密度が低く柔らかい傾向があるため、インプラントと骨が結合するまでに時間を要することが多く、治療期間が長くなる傾向にあります。しかし、インプラント治療は時間がかかるものの、天然の歯とほぼ変わらない機能性や審美性を回復できる点が最大のメリットです。しっかりと噛めるようになることで食事の楽しみが広がり、見た目の改善によって自信を持って笑顔になれるなど、長期的な視点で見れば非常に価値の高い治療と言えます。
なぜ治療期間に個人差が生まれるのか?
インプラント治療の期間に個人差が生まれる理由は多岐にわたりますが、主に患者様の口腔内の状態、顎の骨の状況、インプラントを埋め込む本数、そして選択される手術方法などが影響します。
まず、患者様の口腔内の健康状態が大きく関わります。例えば、治療前に虫歯や歯周病が進行している場合、それらの治療を優先して行う必要があるため、インプラント治療に入るまでの準備期間が長くなります。特に重度の歯周病は、インプラント治療の成功率に影響を及ぼすため、徹底的な事前治療が不可欠です。
次に、顎の骨の量や質も重要な要素です。インプラントは顎の骨に直接埋め込むため、十分な骨量と強度が必要です。もし骨の量が不足している場合は、「骨造成手術」と呼ばれる骨を増やすための追加治療が必要となります。この骨造成手術を行うと、インプラントを埋め込む前に数ヶ月の治癒期間が必要となるため、全体の治療期間が大幅に延長されることになります。さらに、インプラントを埋め込む本数が多かったり、顎の広範囲にわたる治療が必要な場合も、治療計画が複雑になり、期間が長くなる傾向があります。
また、インプラントの手術方法として「1回法」と「2回法」があり、どちらを選択するかによっても期間は変わります。1回法は手術が一度で済みますが、2回法はインプラント埋入後に一度歯肉を閉じ、骨との結合を待ってから再度歯肉を開いてアバットメントを装着するため、治癒期間を含めて全体の期間が長くなります。このように、個々の状況に応じた最適な治療計画が立てられるため、治療期間には患者様ごとに差が生じるのです。
インプラント治療の全体の流れと各ステップの期間
インプラント治療は、失われた歯の機能と見た目を取り戻すための、計画的な治療プロセスです。この治療は、診断から始まり、外科手術、人工歯の装着、そして長期的なメンテナンスに至るまで、いくつかの明確なステップを経て進められます。ここでは、インプラント治療がどのような流れで進んでいくのか、またそれぞれのステップにどれくらいの期間がかかるのかを詳しく解説していきます。治療全体のプロセスを把握することで、安心して治療に臨むことができるでしょう。
ステップ1:カウンセリング・精密検査・治療計画の立案(期間:約2日~2週間)
インプラント治療の最初のステップは、患者さんの口腔内の状態を正確に把握し、最適な治療計画を立てるためのカウンセリングと精密検査です。この段階では、歯科医師が患者さんの悩みや治療への希望を詳しくヒアリングし、口腔内全体の診察を行います。特に、CT撮影によるあごの骨の量や質、神経や血管の位置の確認は非常に重要です。これにより、インプラントを安全かつ確実に埋入できるかどうかが判断されます。
また、全身の健康状態や既往歴、服用している薬なども詳しく確認し、インプラント治療が可能かどうか、あるいは治療を進める上での注意点がないかを慎重に判断します。これらの詳細な検査結果に基づいて、一人ひとりの患者さんに合わせたオーダーメイドの治療計画が立案されます。このステップの期間は、通常2日〜2週間程度で、歯科医院への通院回数は2~3回が目安です。
ステップ2:事前治療(期間:口腔内の状態による)
精密検査の結果、口腔内に虫歯や歯周病などの問題が見つかった場合、インプラント治療に入る前にこれらの「事前治療」を行う必要があります。インプラントを埋入する場所やその周囲の環境が不健康な状態では、インプラント治療の成功率が著しく低下し、治療後にトラブルが起こるリスクが高まるためです。例えば、歯周病が進行していると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
そのため、虫歯の治療や歯周病の改善を優先的に行い、口腔内全体をインプラント治療に適した健康な状態に整えます。この事前治療にかかる期間は、患者さんの口腔内の状態によって大きく異なり、軽度な場合は数週間で済むこともあれば、重度の場合は数ヶ月を要することもあります。この事前治療の期間が、インプラント治療全体の期間を長くする一因となる場合があることも理解しておくことが大切です。
ステップ3:インプラント埋入手術(期間:1日)
事前治療が完了し、口腔内がインプラント治療に適した状態に整ったら、いよいよインプラント埋入手術を行います。この手術は局所麻酔のもとで行われるため、痛みを感じることはほとんどありません。インプラント1本あたりの手術時間は、一般的に約30分程度と比較的短時間で完了します。
手術では、まず歯茎を切開し、あごの骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込むための小さな穴を開けます。そこにインプラント体を慎重に埋入し、最後に歯茎を縫合します。骨造成などの追加処置が必要な場合は、手術時間が約60分程度かかることもあります。通常、この手術は日帰りで完了し、入院の必要はありません。
インプラントの手術方法「1回法」と「2回法」
インプラントの外科手術には、主に「1回法」と「2回法」という2つの術式があります。それぞれの方法には特徴と適応条件があり、患者さんの骨の状態や治療計画に基づいて選択されます。
「1回法」は、インプラント体の埋入と、インプラント体と人工歯を連結するためのアバットメント(連結部分)を装着する処置を、一度の手術で行う方法です。この方法では、外科処置が一度で済むため、患者さんの身体的負担が少ないというメリットがあります。しかし、歯茎からアバットメントの一部が露出した状態で治癒を待つため、感染リスクの観点から、あごの骨の状態が非常に良いなど、適応できる症例が限られます。
一方、「2回法」は、まず1回目の手術でインプラント体をあごの骨に埋入し、歯茎を閉じて完全に覆って縫合します。その後、インプラントと骨が結合する治癒期間を待ち、数ヶ月後に2回目の手術で歯茎を小さく切開し、インプラント体の頭部を露出させてアバットメントを連結します。この方法は、インプラント体が歯茎の下で保護された状態で骨と結合するため、感染リスクが低く、より多くの症例に適用できるというメリットがあります。
ステップ4:インプラントと骨の結合を待つ治癒期間(期間:約3ヶ月~6ヶ月)
インプラント埋入手術後、インプラント体があごの骨と結合するのを待つ「治癒期間」に入ります。この結合プロセスは「オッセオインテグレーション」と呼ばれ、インプラントが長期的に安定して機能するために不可欠な期間です。インプラントと骨がしっかりと結合することで、人工の歯根が天然の歯根のように機能し、人工歯をしっかりと支えることができるようになります。
この治癒期間の目安は、通常3ヶ月から6ヶ月程度です。しかし、患者さん一人ひとりの骨の質や量、全身状態、あるいはインプラントを埋入した部位によって期間は変動します。一般的に、骨の密度が高い下あごよりも、骨が柔らかく結合に時間がかかる傾向がある上あごの方が、治癒期間が長くかかることがあります。この期間は、インプラントの成功を左右する極めて重要な時間であり、焦らずに待つことが大切です。
ステップ5:アバットメント(連結部分)の装着(期間:1日)
インプラント体と骨がしっかりと結合した後、人工歯を取り付けるための準備として「アバットメント」という連結部分を装着します。アバットメントは、インプラント体と人工歯をつなぐ土台となるパーツです。
特に「2回法」で手術を行った場合は、歯茎の下に埋まっていたインプラント体の上部にアバットメントを連結するため、歯茎を小さく切開する簡単な外科処置が必要になります。一方、「1回法」の場合は、すでに歯茎から露出しているアバットメントの役割を担うパーツを、最終的な人工歯を取り付けるためのアバットメントに交換する処置が行われます。このアバットメントの装着は通常1日で完了します。
ステップ6:人工歯(上部構造)の製作・装着(期間:約1~2週間)
アバットメントの装着が完了したら、いよいよ治療の最終段階である「人工歯(上部構造)」の製作と装着に移ります。このステップでは、まず患者さんの口腔内の型取りを行い、その型を基にして歯科技工士が一人ひとりの噛み合わせや周囲の歯の色、形に合わせたオーダーメイドの人工歯を製作します。人工歯の素材には、セラミックやジルコニアなどがあり、見た目の美しさや耐久性を考慮して選択されます。
人工歯の製作には、通常約1~2週間程度の期間がかかります。製作された人工歯は、歯科医院でアバットメントの上に装着され、噛み合わせや見た目の微調整が行われます。これにより、患者さんは天然の歯と変わらないような機能と審美性を回復し、インプラント治療が一区切りとなります。
ステップ7:治療後のメンテナンス(期間:治療完了後から継続)
インプラント治療が完了し、人工歯が装着された後も、インプラントを長持ちさせるためには「メンテナンス」が非常に重要です。インプラントは虫歯になることはありませんが、手入れを怠ると天然の歯と同様に歯周病に似た「インプラント周囲炎」という炎症を起こすリスクがあります。インプラント周囲炎が進行すると、あごの骨が溶けてインプラントが抜け落ちてしまう可能性もあります。
このため、インプラント治療後は、歯科医院での定期的な検診と専門的なクリーニングが不可欠です。通常、3~6ヶ月に1回程度のペースで通院し、インプラントの状態や口腔衛生状態のチェック、歯石除去などを行います。また、患者さん自身による毎日の丁寧なブラッシングなどのセルフケアも、インプラントを健康に保つ上で非常に重要です。このメンテナンスは、インプラントを一生涯にわたって快適に使い続けるために、治療完了後から継続的に続けていく必要があります。
インプラント治療の期間が長引くケース
インプラント治療の期間は、患者さんの口腔内の状態や治療計画によって異なりますが、特定の条件に当てはまる場合には、当初の予定よりも治療期間が長引くことがあります。これは、インプラントを安全かつ確実に定着させるために追加の処置が必要となるためです。ここからは、治療期間が長引く代表的なケースについてご紹介します。
顎の骨の量が不足している場合(骨造成手術)
インプラント治療において、顎の骨の量が不足している場合は治療期間が長引く最大の要因となります。インプラント体は顎の骨にしっかりと固定されることで安定性を保つため、骨の量が十分でないと埋め込むことができません。このような場合に必要となるのが「骨造成手術」です。
骨造成手術は、骨を増やすための処置であり、「骨誘導再生(GBR)」などの手法が用いられます。これは、患者さん自身の骨や人工骨などを移植して、インプラントを埋入するのに十分な骨の厚みと高さを確保する方法です。この手術を行うと、インプラントを埋め込む前に数ヶ月間の治癒期間が必要となるため、全体の治療期間が大幅に長くなります。
骨造成手術が必要かどうかは、精密検査によって判断されます。骨の量が不足していても、骨造成手術によってインプラント治療が可能になる場合が多く、治療の選択肢を広げる重要な処置と言えます。
歯周病や虫歯の治療が必要な場合
インプラント治療を始める前に、口腔内に歯周病や虫歯がある場合は、これらの治療を優先して行う必要があります。口腔内に感染源となる重度の歯周病や虫歯が存在すると、インプラント治療の成功率が低下したり、術後にインプラント周囲炎などの合併症を引き起こすリスクが高まるためです。
歯周病や虫歯の治療内容は、その重症度によって大きく異なります。軽度であれば短期間で治療が完了することもありますが、重度の場合には数ヶ月単位で治療期間が追加される可能性もあります。この事前治療の期間も、全体のインプラント治療スケジュールに影響を与える要因となることを理解しておくことが大切です。
インプラント治療期間に関するよくある質問
インプラント治療の期間については、多くの方が様々な疑問や不安を抱えていることと思います。ここでは、患者様からよく寄せられる質問にお答えする形で、インプラント治療の期間に関する疑問を解消していきます。
治療中に歯がない期間はありますか?
インプラント治療中、「歯がない状態で過ごさなければならないのではないか」とご心配される方もいらっしゃるかもしれません。特に前歯などの目立つ部分では、日常生活への影響が大きいと考えるのは自然なことです。
しかし、ご安心ください。多くの場合、インプラント治療中に歯がないまま過ごす期間はほとんどありません。特に審美性が重視される前歯などのケースでは、治療中に「仮歯」や「仮の入れ歯」を装着することが一般的です。これにより、見た目を損なうことなく、治療期間中も普段と変わらない生活を送ることが可能です。ただし、仮歯は最終的な人工歯に比べて強度が劣るため、硬いものを噛むのは避けるなど、いくつかの注意点があります。
治療期間中の食事や生活で気をつけることは?
インプラント治療期間中は、特に手術直後において、いくつかの注意点があります。手術当日は麻酔が完全に切れるまで食事を控えるようにしてください。麻酔が効いている状態で食事をすると、誤って口の中を噛んでしまったり、やけどをしてしまったりするリスクがあるためです。麻酔が切れてからは、柔らかいものから徐々に食事を再開し、刺激の少ないものを摂るように心がけましょう。具体的には、おかゆやうどん、ゼリーなどがおすすめです。
また、手術後は飲酒や激しい運動、長時間の入浴は控えるようにしてください。これらは血行を促進し、出血や腫れを悪化させる可能性があるためです。シャワー程度であれば問題ありませんが、湯船に浸かるのは数日間避けるのが賢明です。喫煙は、傷口の治癒を著しく妨げ、インプラントの成功率を低下させる大きな要因となります。そのため、治療期間中は禁煙を強くおすすめします。うがいも強く行いすぎると傷口に悪影響を与えるため、優しく行いましょう。
治療期間を短くする方法はありますか?
インプラント治療期間を短縮する方法として、「即日インプラント」と呼ばれる治療法があります。これは、抜歯と同時にインプラントを埋入し、さらにその日のうちに仮歯まで装着する治療法です。この方法が適用されれば、通常のインプラント治療と比較して、治療期間を大幅に短縮できる可能性があります。
しかし、即日インプラントは、誰もが受けられる治療ではありません。この治療法は、あごの骨の量や質が非常に良好であること、全身状態に問題がないことなど、厳格な条件を満たす場合にのみ適用されます。そのため、まずは歯科医師による精密な検査と診断を受け、ご自身の口腔内の状態が即日インプラントに適しているかどうかを確認することが非常に重要です。
手術中の痛みはどのくらいですか?
インプラント手術と聞くと、「痛そう」というイメージをお持ちの方も少なくないでしょう。しかし、ご安心ください。手術中は局所麻酔をしっかりと行いますので、痛みを感じることはほとんどありません。治療中に万が一痛みを感じた場合は、すぐに歯科医師やスタッフにお伝えいただければ、麻酔を追加するなど適切な処置を行います。
手術後の痛みについては、親知らずを抜いた後と同程度であることが多いです。歯科医院では、術後の痛みを和らげるための痛み止めを処方しますので、指示通りに服用することで十分にコントロールできるでしょう。また、多くの歯科医院では、表面麻酔や電動注射器の使用、あるいは細い針の使用など、患者様が安心して治療を受けられるよう、痛みを軽減するための様々な工夫を凝らしています。
まとめ
インプラント治療は、歯を失ってしまった方にとって、ご自身の歯に近い機能と見た目を取り戻せる優れた治療法です。治療期間は、お口の中の状態や選択する治療法によって大きく異なり、短い場合で3ヶ月程度、長い場合は1年以上かかることもあります。
治療は、精密検査から始まり、インプラントの埋入、骨との結合を待つ期間、そして人工歯の装着と、複数のステップを計画的に進めていきます。期間が長くなることには、骨の量が足りない場合の骨造成や、虫歯・歯周病の治療など、インプラントを長持ちさせるための医学的な理由があります。
確かに治療期間は長く感じられるかもしれませんが、インプラント治療を終えた後には、美味しく食事ができる快適な生活と、自信を持って笑える毎日が待っています。ご自身のケースで正確な治療期間や費用を知るためには、まずは歯科医院で相談し、詳しい検査と説明を受けることが大切です。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者
国立東北大学卒業後、都内の医療法人と石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)に勤務。
2018年大森沢田通り歯科・予防クリニックを開業し現在に至る。
【所属】
・5-D Japan 会員
・日本臨床歯周病学会 会員
・OJ(Osseointegration study club of Japan) 会員
・静岡県口腔インプラント研究会 会員
・日本臨床補綴学会 会員 会員
・日本デジタル歯科学会 会員
・SPIS(Shizuoka Perio implant Study) 会員
・TISS(Tohoku implant study society) 主催
【略歴】
・2010年国立東北大学 卒業
・2010年都内医療法人 勤務
・2013年 石川歯科(浜松 ぺリオ・インプラントセンター)勤務
・2018年 大森沢田通り歯科・予防クリニック 開業
・2025年 銀座Aクリニックデンタル 理事長 就任
平和島・大森エリアの歯医者・歯科「大森沢田通り歯科・予防クリニック」
『沢田通り歯科・予防クリニック』
住所:東京都大田区大森北6丁目23−22
TEL:03-3767-0648


